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ミツバチや赤とんぼはじめ生態系への影響が心配されるネオニコチノイド系農薬について考えるシンポジウムを開催しました。

2015.11.25
活動報告

icon_takagawa.jpg 市民活動推進室の高川です。

ベイレフェルト生態系に大きな影響を与えていると疑われている「ネオニコチノイド系農薬」について考えるシンポジウムを、11月21日に開催しました。

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スイスからお招きしたIUCNタスクフォースのベイレフェルト氏をはじめ、国内外から5名の方にご講演いただき、新農薬の生態系影響や適正利用のあり方について議論しました。

浸透性農薬(ネオニコチノイド系農薬とフィプロニル)は、2000年ごろから世界中に普及した新農薬で、非常に使い勝手がよく、人間への健康影響や様々な生物への環境影響が少ないという農薬です。一方で、ミツバチや赤トンボなど、特定の生き物に非常に強い毒性を持っており、また水にとけて生態系全体に影響を及ぼしているとされています。

当日は全国から環境系NPOや消費者団体、農家、化学メーカーなど150名もの方にご来場いただきました。

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IUCN浸透性殺虫剤タスクフォースのマーテン・ベイレフェルト氏からは、2014年に公表された「世界的な総合評価書」の作成経緯をお話しいただき、「私たちはかつて毒性の強かったDDTへの対応に数十年を費やした。このような過ちを繰り返してはならない」という強いメッセージをいただきました。

この他に、マイケル・ノートン氏からは欧州アカデミー学諮問委員会の取りまとめたネオニコに関する科学レポートの内容を伝えていただき、二橋亮氏からはご自身の30年以上のトンボ調査データや全国のアマチュアからのヒアリングから、新農薬の流通が始まった年からアキアカネなどの赤トンボが全国で減少したことを伝えていただきました。

また五箇公一氏からは圃場実験によってミジンコやトンボへの農薬影響が明らかになったことや、現在の農薬安全試験では生態系影響を捉えきれないことなどを発表いただきました。

一方で、本山直樹氏からは、農薬は私たち自身が食糧生産や農業保護のために使ってきたものであり、リスク管理しながらも農薬は使っていく必要があることや、生態系の回復力を失わせないことが大事だと講演いただきました。

総合討論では浸透性殺虫剤の生態系影響や、今後の農薬の適正利用について会場も交えて非常に熱い議論が交わされました。「影響が科学的に十分明らかになってからでは対応が遅く、総合的な判断と対策が必要だ」「同じ農薬だけを世界中で使うのは農薬製造サイドからみても持続可能でない」「浸透性殺虫剤や農薬を使わずに生態系と共存する農業が日本各地でじわじわ広がっている」といった意見がだされました。

日本自然保護協会としても浸透性殺虫剤をテーマとしたイベントが今回が初めてです。農薬や農業のあり方そのものを含んだ難しいテーマですが、「過去の過ちを繰り返さない」ためにも、関係者との対話や関係機関への働きかけを引き続き続けていきます。

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