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「自然しらべ2013 日本のカメさがし!」中間レポート

2013.08.19
活動報告

日本では、古くからペットとしてや食用として、あるいは祭事用として、元々くらしていた場所からカメが持ち運ばれることがしばしばありました。その結果、在来のカメについても外来のカメについても、国内の分布状況は、現在でも正確には分かっていません。
そんなカメを今年はみんなでしらべて、2013年のカメの分布状況を明らかにしてみたいと思っています。
「自然しらべ2013 日本のカメさがし!」が5月1日にはじまって以来、北は北海道札幌市から南は沖縄県石垣市まで、たくさんのカメの写真と情報が日本自然保護協会に寄せられています。その中から面白カメ情報をお伝えします。

ニホンイシガメ

生息地の開発や乱獲などで数を減らしつつある日本固有種のニホンイシガメも東京都、愛知県、和歌山県、京都府、愛媛県、高知県、大分県をはじめとする全国各地から少しずつですが目撃情報が寄せられています。

愛媛県の自然観察指導員、松田久司さんからお寄せいただいた松山城のお堀で見つかったひなたぼっこしているニホンイシガメ。松田さんは、お堀の中の浮島にいるミシシッピアカミミガメを撮影したつもりで画像を確認したところ、ニホンイシガメだったそうです。ミシシッピアカミミガメばかりが目立つ水辺でも、しっかりニホンイシガメは暮らしているのですね。

shirabe-matsudahisashi.jpg(写真:松田久司さん・愛媛県)

ミシシッピアカミミガメ

10年前に自然しらべで行ったカメ調査では、みつかったカメ約6000匹のうち、なんと6割以上(約3700匹)が外来種のミシシッピアカミミガメでした。今年の自然しらべでも、北海道、本州、四国、九州から広く情報が集まり、現在までに寄せられる全情報うちの多くはミシシッピアカミミガメの写真と記録です。(10年前のカメ調査の記録は「今までの自然しらべ」にPDFで結果レポートを掲載しています。

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冬季の低温のため生息にカメの生息に適さないと思われる北海道でも、札幌市と小樽市からミシシッピアカミミガメの情報をお寄せいただきました。小樽市から情報をお寄せくださった福田さんからは、「直接の原因かどうかは分からないが、見つかった川には下水処理後の温かい水(冬季に17℃程度)が流れ込んでいて、カメが越冬しやすい環境にあるのではないか」とのことでした。(写真:福田修平さん・北海道)

クサガメ

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ミシシッピアカミミガメに次いで多くの情報が寄せられているカメです。クサガメは甲羅に3本の線が入っていて見分けやすいため、たくさんのミシシッピアカミミガメが写っている写真の中に、数匹のクサガメが混じっているという写真が多く寄せられています。今回の調査では千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、岡山県、愛媛県、福岡県、佐賀県、長崎県など今回の調査でも全国各地から情報が寄せられています。近年の研究でクサガメは、江戸時代と戦後、中国南部から日本に持ち込まれた外来のカメの可能性が高い種です。日本では全国的に分布を広げていますが、もともとの分布域である中国南部では数を減らしているようです。(写真:泳いでいるクサガメ。土渕茂勝さん・佐賀県)

ニホンスッポン

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ニホンスッポンは、池や沼の主のように堂々とひなたぼっこをしている姿を見かけることも多いカメです。ミシシッピアカミミガメやクサガメのように、一枚の写真にたくさんのニホンスッポンが見られるということはなく、送られてきた情報ではすべて1匹の単独の写真です。ニホンスッポンは食用としても愛されているカメでもあります。今回も東京都、神奈川県、愛知県、山口県、愛媛県、高知県、佐賀県などから広く情報が寄せられています。10年前に自然しらべで行ったカメ調査では、全体の2%しか目撃情報が得られていませんが、現時点では前回の調査より少しだけ多い割合で報告が寄せられています。(写真:NACS-J・神奈川県鎌倉市)

そのほかのカメ

沖縄県石垣市からは、ヤエヤマセマルハコガメなどの情報が寄せられていますが、マニュアルで紹介した上記の4種類に比べると、そのほかのカメの情報は大変少ないです。

たのしい報告

カメの産卵の様子が見られました。

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愛知県名古屋市で6月4日に撮影されたカメの産卵。川に近い場所にお住まい投稿者の方のお庭の庭先にカメが産卵しに来たそうです。カメは6月~7月頃に産卵を行うため、この時期の水辺の土手などを注意深く観察していると、カメの産卵の様子が見られることがあります。(写真:阿部満里子さん・愛知県)

カメをさがしてみると、こんな生きものたちにも出会えるかも。

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日本自然保護協会の会員の古市浩康さんは、6月5日にJR岐阜駅南口からすぐのところを流れている街中の川、「清水川」でカメしらべをしてくださいました。カメを見つけて「クサガメかなーと思いつつ、たまたまそのとき水の中にもぐっていったカメをカメラでとっていたら、ヌ―っと川下から物体がカメラの視界に入って来ました。なんと、ヌ―トリア??? こんなとこにいるんだ!体長は50cmくらいでしょうか。ゆうゆうと私の前を泳いで横切って行きました。他にもハヤ、カワムツでしょうか? 綺麗な魚がたくさん見られました。」とのことでした。古市さんからは「自然しらべのおかげで、綺麗な魚などいろいろ生き物も発見できてラッキーです。」とのご感想もあわせていただきました。

身近な場所でカメを探すと、そのまわりでくらす魚や昆虫など多様な生きものたちの様子も見えてきて、生きもの同士のつながりが感じられると思います。外来種問題についても考えるきっかけにもなるでしょう。(写真:古市浩康さん・岐阜県)

※ヌートリアは南アメリカ原産の外来種で、外来生物法により特定外来生物に指定されています。
http://www.env.go.jp/nature/intro/1outline/list/L-ho-06.html

自由研究のための資料紹介

カメについてもっと知りたくなった、調べてみたくなったという方は、参考になる本や記事を下記にご紹介するので読んでみてください。また日本自然保護協会にインターンに来ている大学生が、リレー形式で自由研究のヒントとなる「おもしろカメ話」をFacebook 「しぜん育@日本自然保護協会」ページ(7月30日~9月末まで毎週月・木曜日に更新!)で公開していますので、こちらもぜひご覧ください。

★参考になる書籍★

  • 「イシガメの里」松久保晃作(小峰書店)
  • 「亀のひみつ」田中美穂 (WAVE出版)※自然しらべ学術協力者の矢部隆さんが監修。
  • 「今、絶滅の恐れがある水辺の生き物たち」内山りゅう(山と渓谷社)※ニホンイシガメの章を自然しらべ学術協力者の矢部隆さんが執筆。
  • 「カメのくらし」増田戻樹(あかね書房)
  • 「うちのカメ」石川良輔(八坂書房)※自然しらべ学術協力者の矢部隆さんが監修。
  • 「カメのきた道」平山廉(NHK出版)
  • 「月に吠える」萩原朔太郎(岩波文庫)

★参考になるウェブ記事★

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