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アセス法の基本指針、「環境影響評価法に基づく基本的事項等に関する技術検討委員会報告書(案)」に意見を出しました。

2012.02.17
要望・声明
2012年2月16日

 

環境省総合環境政策局環境影響評価課 御中

 

保護プロジェクト部部長 大野正人
保護プロジェクト部 辻村千尋

 

環境影響評価法に基づく基本的事項等に関する
技術検討委員会報告書(案)に対する意見

 

該当箇所:2.基本的事項において対応が必要な事項
     第一.計画段階配慮事項の選定等指針に関する基本的事項(2)
    一.一般的条項 <P3>
 
意見内容:肝心な「計画段階配慮」の事項の内容が、一般に理解が難しく、特に「努める」と「留意する」の違いや、ゼロ・オプションについて曖昧に「現実的である限り」などは、不明瞭で冗長的な表現が目立つ。複数案には、比較対象と回避の選択肢を明確にするために、ゼロ・オプションを含めることを基本とすべきである。どうしても複数案の設定が困難な場合は、合理的な理由を求めるべきである。

 

該当箇所:2.基本的事項において対応が必要な事項
     第一.計画段階配慮事項の選定等指針に関する基本的事項(6)
     <P3>及び4-1法制度全体に関する課題<P16>

 

意見内容:計画段階配慮の評価は、比較整理にとどまるのであれば、従来の事業アセスと変わりなく方法書以降の手続きによっても合意形成には至らなくなる。改正アセス法上の環境面で複数案を絞り込むための判断の考え方や基準などを示さなければならない。この点を明確にしなければ、複数案づくりがアリバイ的な手続きになると危惧する。また、社会面・経済面を加えたものを総合的な判断するならば、政治判断だけに委ねられないよう制度的な手続きを別途設けるべきである。

 

該当箇所:2.基本的事項において対応が必要な事項
     第一.計画段階配慮事項の選定等指針に関する基本的事項(2)
    二.計画段階配慮事項の区分ごとの調査、予測及び評価の基本的な方針
    (2)生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全 イ「生態系」<P4>
 
意見内容:生物多様性の確保のために配慮書段階で「生態系」を把握する際に対象事業のスケールに応じた「系」の評価が必要である。例えば、南アルプスなどの山岳域全体に関係するようなスケールである場合、他の山岳域との比較で、その価値や重要性が評価できる。しかし、報告書案であげられた環境のまとまりでは、まとまりのある生態系の評価は十分にできない。河川について、氾濫原の湿地帯や河畔林をあげているにも関わらず、根幹となる河川そのものを含めていない。河川の連続性や森や海との連携が各保全施策でも掲げているのだから、把握する対象とすべきである。

 

該当箇所:三.計画段階配慮事項並びに調査、予測及び評価の手法の選定に当たっての
一般的留意事項 <P.5>
 
意見内容:調査手法や評価や環境保全措置など、希少性や不確実性が高いものほど専門家の助言に事業者は頼る面がある。このように科学的な責任を伴う専門家のバックグランドとなる科学的な考えや業績が今後より一層問われる。専門の分野や所属機関の属性だけではなく、氏名、所属、専門分野を公表し、専門家もそれを前提とした助言内容とすべきである。また、専門家の助言を求める機会は増えるため、事業者が公開の専門家会議を設置することを推奨すべきである。

 

該当箇所:第六.報告書の作成に関する基本的事項<P11>

 

意見内容: 本来、事後調査といえば、工事中及び工事後の供用段階も評価書の影響が予測に即しているのか、環境保全措置が効果的に行われているかをモニタリング・評価し、結果を工事方法や施設の運用を順応的に見直していくものである。改正アセス法で、事後報告書の公表が義務づけられたが、建設工事の終了まで「事業」という理屈から、対象期間が工事終了時と限定されているため供用後の事後調査についても、事業者の判断に委ねず報告されるよう担保すべきである。

 

該当箇所:4.環境影響評価制度の円滑な実施に向けて
  4-1.法制度全体に関する課題(2)放射性物質汚染への対応<P16>

 

意見内容:今後想定される東電・原発事故の処理・撤去に伴う事業に備え、放射性物質の環境影響を環境影響評価法の対象として予測評価すべきである。そのためには、法制度の放射性物質の取扱いの除外規定(アセス法第52条)を削除すべきである。

 

 
該当箇所:4.環境影響評価制度の円滑な実施に向けて
 4-3.個別の環境要素・環境影響評価技術要素に関する課題
 (1)生物多様性オフセット<P17>
意見内容:生物多様性は地球の歴史と進化の産物であり土地固有のものであり、多様な日本の自然環境は、定量化し他地域のものと代替することが極めて困難である。現状では、損失を回避し現状の保全を最優先させるべきである。オフセットを含む代償措置は、回避も最小化も不可避であると証明・審査できる制度設計にもとづくものでなければ、推奨すべきではない。

 

以上
参考■環境影響評価法に基づく基本的事項等に関する技術検討委員会報告書(案)に対する意見募集(パブリックコメント)について(お知らせ)<外部リンク>
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=14700

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