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2011.11.07

韓国の両生類市民モニタリングの現場を視察してきました!

韓国視察-空港出迎えNACS-Jでは身近な自然を守る手段のひとつとして、市民によるモニタリング調査の手法を開発し、普及に努めてきました。その一環として韓国のNGOグリーンコリア(*)と両生類の市民モニタリングの交流事業(㈶日韓文化交流基金・日韓共同未来プロジェクト)を行うことになり、8月24~28日、韓国の現場を視察しました。

日本からはNACS-Jスタッフ4名と両生類関係者2名、韓国からはグリーンコリアのソ・ジェチョル局長とスタッフ2名、通訳としてNPONPО法人ラムサール・ネットワーク日本韓国支部スタッフら合計10名が参加しました。

韓国には豊かな河川環境が残っており日本では絶滅してしまったカワウソが生息し、山ではベンガルヤマネコ(ツシマヤマネコはその地域種)も生息していますが、現在、各地で都市開発やゴルフ場開発が著しく、私たちも開発中の現場をたくさん見ました。韓国と日本の自然保護活動や社会的背景の違いなどを話し合ったことなどは貴重な経験となりました。以下、NACS-Jスタッフによる現場レポートです。

(福田真由子/保全研究部)

 
韓国両生類モニタリング視察地図

韓国視察①高速道路建設現場①太白山脈で進む高速道路開発現場
25日は韓国の脊梁山脈、太白山脈の北部で進められている高速道路開発地を視察しました。ここは、太白山脈最高峰の雪岳山を含む国立公園に指定されており、質の高い森林生態系が広がっています。現在、ソウルからは、南へ大きく迂回する高速道路か一般道路で来ることができますが、観光需要も高い地域で、経済効果などを理由に、国策として韓国道路交通公社(以下道路公社)がこの新ルートを計画しました。環境アセスと、幾度かのルート変更を経て、世界でも4番目の長さとなる大規模なトンネルによるルートが確定し、工事が進められています。

グリーンコリアは、計画当初からハコネサンショウウオモドキ(左カコミ欄参照)を中心とした独自調査により、新たな道路建設の反対運動を行い、環境アセスやルート変更にも影響を与えてきました。しかし現在は、工事による森林生態系への影響をモニタリングするため、道路公社との「協働調査」を行っています。国策として推進される事業にどう反対しても止まらない状況であったため、やむを得ず、この地域の調査を継続的に実施して必要な保全策を実行することは、反対を続けるよりもメリットがあると判断したとのことでした。日本でも、協働が進みつつありますが、相手との役割分担や取り組むべき課題を明確にしなければ、成果を出すことは難しいのです。いかに「協働」に取り組むかが、世界的にも課題であることが分かりました。

(出島誠一/保護プロジェクト部)

②北朝鮮国境地帯・DMZ周辺
26日は、北朝鮮との国境となっているDMZ(非武装地帯)周辺を視察しました。今なお緊張が続くエリアですが、1953年に北朝鮮と停戦協定が交わされて以来、人の影響がまったくない、世界でも希有な地域であること、グリーンコリアが2006年から2年間DMZに沿って生態系調査に入りその貴重な自然環境について報告していること、韓国の自然保護を知る上で朝鮮戦争後の現状を知る必要があることなどから、韓国側に視察をお願いして実現しました。

韓国視察①DNZ周辺DMZは境界線から2㎞のエリアを指しますが、さらにその5㎞外側に人民統制区域(CCZ)というエリアがあり、そこは入域に許可が必要です。周辺は激戦区になったところだそうです。このような地域を観光施設として開放し、銃を持った兵隊が案内することにも驚きましたが、展望台から目と鼻の先に北朝鮮の国境や警備兵が見えるという現実に驚きました。CCZには植林したコナラやカシワの林がわずかに残り、ほかは日本にもあるような美しい田園風景が広がっていました。この自然環境が維持されてきた背景には沖縄をはじめ日本の米軍基地の配備とも無関係ではないことをソ局長に教えられ、認識を新たにしました。

(朱宮丈晴/保全研究部)

韓国視察③ヒキガエル生態公園③市民が管理・ヒキガエル生態公園
27日は、カエルの市民調査を行っている団体Toad-friend(カエルの友達)が管理をしている生態公園(清州市)を訪れました。ここは、かつてはのどかな農村でしたが、大規模開発計画が持ち上がり、そこに暮らしていたヒキガエルの生息環境を守るために周辺住民による開発阻止の運動が始まりました。早朝に700人も集まりデモを行ったこともあるそうです。結局、開発自体は止まることはなく、5500戸が入る巨大アパート群がつくられました。交渉の結果、開発エリアの真ん中の池と外側の山が残され、それらをつなぐ緑の回廊と、ビジターセンターがつくられることになりました。ヒキガエルは山に暮らし、池に産卵に来るという生活をしています。Toad-friendはビジターセンターで子どもたちへの環境教育などを行ったり、市民ボランティアとカエルの生態調査を行ったりしています。繁殖期には毎日5人での調査を欠かさず、個体数や移動ルート、産卵数などを調べるということです(写真はテレメトリ調査の様子)。市民モニタリングは休日には、100㎞以上離れたソウルからも参加者が来るそうです。

反対運動にしても周辺住民のバイタリティの高さには驚くばかりでした。市民による調査が行政を動かし、計画の変更に結びつけた行動力は日本でも学ぶべき所が多いと感じました。

(小此木宏明/保全研究部)

来年3月に韓国の視察団が来日する際には、韓国の取り組みなどを発表いただくシンポジウムを計画しています。詳細は、後日お知らせします。

*グリーンコリア(緑色連合Green Korea United):1991年に結成された韓国の全国環境NGOのひとつで、インチョン、釜山など全国10カ所に地域組織があり、専門組織として法律センターや出版社などを持っている(本部はソウル)。会員1万5000人。地球温暖化、軍事施設の環境汚染、野生動物の保護活動、DMZ等保護地域の提案など幅広い活動を行っている。


韓国の両生類の生息状況と保全の状況

(植田健仁/北方生物研究所)

韓国視察―両生類の生息状況この視察中、観察できた韓国の両生類は、サンショウウオ類2科2種、カエル類4科7種。高速道路建設が進む江頭道山系パンテ山の渓流ではハコネサンショウウオモドキの幼生を観察できました。このサンショウウオは、日本にも生息している渓流性サンショウウオの一種で水温の低い沢と、湿度の保たれた森林がないと生息できず、開発されなかった一部山岳地域以外ではほぼ絶滅しています。また、日本には生息していないスズガエルを発見することができました(写真)。背中側が緑色で腹側が赤色という刺激的な配色ですが、なぜか自然の中では保護色になり、人が近づいて飛ばないと見つけられません。

また、ヒキガエル生態公園では保全活動のシンボルとされているアジアヒキガエルをはじめとしてチョウセンヤマアカガエルやトノサマガエルなど日本に生息している種と同じ種のカエル類を観察することもできました。

韓国で観察できた両生類・爬虫類の詳しいリストはこちら

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