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返還予定地の森林を大面積で守るため 「やんばる森林生態系保護地域」の範囲決定!

2008.11.01
活動報告

会報 『自然保護』 2008年11/12月号より転載


今回保護地域となるやんばる地域北部の伊部(いぶ)岳は、森林生態系のまとまりが最も良好なところです。また、山の西面にあたる普久川(ふんがわ)源流部と、北東面の我地川(がじがわ)源流部は、既存の国設鳥獣保護区の範囲と接しているため、2つの制度が一体となって流域のまとまりを保全できるようになることなど、大事な場所の保護に貢献するプランになったと思います。

返還地域のもう半分は、今はリュウキュウマツの人工林で在来の広葉樹も混じる森ですが、まず水源林として管理し、リュウキュウマツを資源として使った後は、保護地域周辺は自然林に戻す再生事業地にしていくことも考えられています。今後、保護地域の保全管理委員会もつくられるので、そこで真っ先に議論したいテーマです。また環境省の国立公園化計画も進行中で、この保護地域と連携させる必要があります。

ただ、今回の保護地域は、あくまでも返還される国有林が検討対象なため、課題が多く残るものでもありました。

第一は、米軍の演習場も残るため、返還地だけで考えた保護地域の形はおのずと人工的になり、守るべき範囲を十分くくりきれていないことです。委員会では、返還されないところも含めて仮想の森林生態系保護地域の理想図を描き、その一部分が今回の設定範囲なのだという説明はできないかと提案してみましたが、米国との関係もあり行政の限界を超えるとのことで実現しませんでした。

 

国有林以外の森をどう保護するか

第2は、国有林周辺には、県営林・県有林や村有林・民有林という、林野庁管理の国有林ではない森があり、そこも国有林とは方法が違ったとしても、自然保護をする必要がある重要地域に変わりないのですが、生態系保護地域の制度はここには及ばないことです。この森林にも保護施策が必要です。

これについては、「緑の回廊」の制度など別のしくみを駆使し、多様性保全への協力を得ていく企画と交渉を始めることを提案しました。林業界に籍を置く委員からは、「林業振興のため、大国林道より西に厳正保護の発想は広げないでほしい」、「禁伐は国有林だけでやってほしい」という意見が出されましたが、一定の木材を使いながら多様性を維持するということはでき、それをしなければこれからの林業は立ち行かないと思われるため、協力を得ることは可能だと思います。特に、国有林から無償で沖縄県に提供されている公の森林「県営林」には国有林とは異なる自然性があり、重要な場所は保護されなくてはなりません。

単なる伐採禁止ではない管理と利用の方法を考えたり、保護上重要な森林をつなげた「保護林ネットワーク」に一部を加えてもらう代わりに再生事業の予算をつけたり、持続可能な林業に転換していくことによる利益を説明し、自然保護を林業者と共に行うしくみを生み出したいと思います。

(常勤理事・横山隆一)

やんばる森林生態系保護地域設定案
図:森林生態系保護地域設定案

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