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長良川河口堰建設問題

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2005.07.06

長良川河口堰の運用10年をふまえてのこれからのとりくみ


▲1994年に建設途中の長良川河口堰周辺でNACS-Jが行った調査のようす

2005 年7月6日、長良川河口堰の運用が始まってから10年が経ちました。この機会を受けてNACS-Jは、堰運用後の10年の環境変化を読み直していくことで、長良川河口堰によってもたらされたものは何だったのかを明らかにしていく、という企画をすすめていくことになりました。

(財)日本自然保護協会としての
長良川河口堰運用後10年間の環境変化の解析と
今後のとりくみについて(告知)

 

本日、長良川河口堰が運用を開始されてから10年が経ちました。この機会を受けて、(財) 日本自然保護協会(理事長田畑貞寿)は、長良川河口堰運用後の環境変化とそのしくみ、およびそれらの変化が地域社会に及ぼした影響を明らかにする企画をすすめることになりました。地元を中心に組織された研究者グループを(財)自然保護助成基金が研究助成していき、その成果を施策に反映させるための働きかけを行う、という企画です。

 

長良川河口堰運用後10年の環境変化を読み直すことは、一つの川と地域が人の干渉によりどのように変貌してきたかを明らかにするだけではなく、日本の川の開発と保全の問題に対して私たちが取るべき指針を見出すための作業になるものと考えています。

 

日本自然保護協会は、この企画で大きく二つの課題を抽出しました。

 

  • 課題1

「中部地方ダム等管理フォローアップ(堰部会)会合」ではなされなかった、長良川河口堰がつくられたことによる長良川の自然・社会への影響の総合評価を行います。

堰閉鎖後、国土交通省によって多くのデータ収集がなされてきましたが、中部地方ダム等管理フォローアップ(堰部会)では、その大量のデータの解析が十分なされないまま、この10年間を「概ね問題なし」と結論付けています。このため、これら大量のデータを読み直すことで、河口堰があることそのものによる科学的な影響を明らかにします。さらに、環境変化の経済的評価や、地域の生活や人と川との付き合い方がどう変わったのかなどの社会的な影響も明らかにしていきたいと思います。

 

  • 課題2

この10年間の河川行政の方針転換によってもたらされた諸制度について、課題を明らかにし、改善を求めていく活動を開始します。

1997 年の河川法の改正により、河川管理における河川環境保全と住民参加が盛り込まれました。その中で、流域委員会という合意形成システムもつくられ、出先機関によって地域に合わせた運営がなされています。その一方で、地域にゆだねられている分、河川法改正以前のプロセスが温存されてしまう場合もあるという問題点も見えてきています。河川行政における意思決定のプロセスと、それを実行する仕組みの課題の抽出を行い、改善のための協議を国土交通省に求めていく予定です。

 

*これまでの長良川河口堰問題に対するNACS-J、研究者の取り組みの参考資料は以下のものが発行されています。

 

  • NACS-J報告書

「長良川河口堰事業の問題点・第3次報告」(1996)
「長良川河口堰が自然環境に与えた影響」(1999)
「河口堰の生態系への影響と河口域の保全」(2000)

  • ほか報告書

長良川河口堰が汽水域生息場の特性に与えた影響に関する研究」(2003)
玉井信行他,文部科学省平成13年度~平成14年度科学研究費補助金研究

 

  • 一般書

 

 

「河口堰」(2000,講談社)村上哲生・西條八束・奥田節夫

 

 


 長良川河口堰問題研究会としての
「長良川河口堰運用後10年間の環境変化の整理と今後の課題」

長良川河口堰問題研究会 総括:村上哲生(名古屋女子大学教授・NACS-J理事)

長良川河口堰は、1994年に本体が完成し、翌1995年から本格的な運用を始めました。運用後の環境変化については、(財) 日本自然保護協会を中心とした研究グループが、1996,1999, 2000年に現場での観測結果に基づき、河川の湖沼化と汽水域の破壊の現状を報告しました。一方、国土交通省も大規模な事後のモニタリング調査を実施し、 2000年に、学識経験者を集めたモニタリング委員会の提言を発表しています。また、2003年には、文科省の科研費助成研究として、多数の研究者が長良川の汽水環境の変化についての総合的な研究を実施しました。一地域の環境問題について、これほど多様な調査が行われたことは異例なことでした。

 

河口域上流における植物プランクトンの発生、堰上下流部での底質の変化と酸素不足、ヨシ帯の縮小、シジミなどのベントスの減少、アユ、サツキマスなどの回遊魚の減少、水鳥の種類組成の変化など、環境影響は多方面に現れていることは、それらの報告書から知ることができます。

 

しかし、環境影響については、その一部を除き、完全に見解が一致しているわけではありません。変化の規模や河口堰の運用との因果関係など、市民が納得できるレベルまでの議論は尽くされてはおりません。また、環境影響の調査は、法的な監視が義務付けられている水質や水産資源として重要な生物に限られており、河口域の環境と生物群集全体の変化をモニタリングする体制も未だ不十分なままです。さらに、環境変化の経済的評価や、地域の生活や人の気持ちをどのように変えてきたのかなど、数値的なデータとして扱い難い問題はほとんど手付かずです。

 

長良川河口堰開始10年を迎えた機に、長良川河口堰運用後の環境変化やそれが地域社会に及ぼした影響を明らかにするために、地元を中心とした研究者グループ「長良川河口堰問題研究会」を組織しました。この研究グループでは、自然科学、社会科学の両面から長良川河口堰問題の10年の歴史を総括することになります。研究の目的は、河口域の環境変化を事例研究としてまとめるだけに留まらず、それを市民にわかり易く伝達し、その成果に基づき長良川河口堰や全国の類似の施設の運用に対して具体的な提言を行うことも含みます。

 

長良川河口堰問題は、堰の完成と運用の開始で終わったわけではありません。吉野川・第十堰改築問題、球磨川水系・川辺川ダム問題などでも、治水や環境影響を巡り同様な議論が繰り返されてきました。また、利根川や筑後川などの長良川以前に造られた河口堰でも、その環境影響が見直されつつあります。長良川河口堰運用後10年の環境変化を総括することは、一つの川と地域が、人の干渉によりどのように変貌してきたかを明らかにするだけではなく、日本の川の開発と保全の問題に対して、私たちが取るべき指針を見出すための作業の第一歩になるものと考えています。

以上

 

 

 

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