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秋田・駒ヶ岳イヌワシ生息地の保全

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2004.06.03

田沢湖・リゾート開発のその後

20年目にして、はじめて2羽の若鳥が巣立つか

いま、日本各地の森で、イヌワシの子育てがクライマックスを迎えようとしています。富山からは、すでに巣立ちの情報が届いたので、この秋田駒ヶ岳の、日本の自然保護にとって大きな意味を持っているこのイヌワシたちの巣立ちも、まもなくだと思います。

じつは、14年前には、この秋田駒ヶ岳のイヌワシの営巣地を取り囲むように、大規模なリゾート開発計画がありました。

「このままではイヌワシが危ない」と、1人の野鳥研究者がNACS-Jに相談を持ちかけてこられたのですが、日本ではイヌワシの生態はまだわからないことがとても多かったのです。
そこで、NACS-Jと日本イヌワシ研究会は、合同調査を開始し、調査を続けながら、関係者との議論をねばりづよく続けました。

日本ではじめての大規模なイヌワシ調査を通じて、私たちはじつに多くのことを知ることができました。調査の最終報告を受けて、JR東日本は計画を中止して くださいました。さらにこの調査結果は、イヌワシ保護の基礎資料として全国各地に波及していきました。

このときの調査・保護活動は、全国の皆さんから寄せられた約1300万円の寄付が財源でした。
あのときの、9000人(*)の方々のご寄付が、この秋田駒ヶ岳の、そして全国各地のイヌワシたちの命を救ったのです。

新緑のころ、日本の森からイヌワシが巣立つことを、ごくあたりまえに喜べる日がくるように、多くの方々の智恵を力を集めていきたいと願っています。
ありがとうございました。そして、これからも、どうぞよろしくお願いします。

イヌワシとリゾート開発計画について

1990 年、秋田県のリゾート重点地区指定とJR東日本によるリゾート開発計画について、1人の野鳥研究者がNACS-Jに相談を持ちかけて来られました。場所は 秋田県の秋田駒ヶ岳山麓。この地域は、秋田県が基本構想を立て、1989年にリゾート法の承認を受けた「北緯40度シーズナルリゾートあきた」の重点整備 地区として、JR東日本がスキー場、ゴルフ場、ホテル等の開発を計画していました。

またすでに、田沢湖スキー場、田沢湖ミナミスキー場、田沢湖高原スキー場が営業し、岩手県側には雫石スキー場が新設予定と、リゾート開発が進む地域でもありました。

ここ秋田駒ヶ岳の山麓にイヌワシの巣があることは、昔から地元では知られていました。秋田駒ヶ岳は、十和田八幡平国立公園の南端に位置し、山麓はブナなど の自然林で覆われています。この山の中腹、田沢湖とその周辺に広がる水田を見渡せる急斜面の岩棚を、イヌワシは子育てに使っていたのです。

1983年以後この巣から毎年若鳥が巣立っていることは、県の委託によって調査を続けてきた地元のアマチュア野鳥研究者によっても確認されていました。

田沢湖・イヌワシ行動圏調査

NACS-Jと日本イヌワシ研究会では、リゾート計画がイヌワシの生息にどのような影響があるかを考えるために合同調査を実施しました。

この調査結果は、『日本自然保護協会報告書第79号 秋田県田沢湖町駒ヶ岳山麓イヌワシ調査報告書』として発行しました。

NACS-Jでは、調査を通じて得られたことを根拠に、関係者に開発計画の見直し、猛禽類の保護施策を提言しました。

調査・分析期間:45カ月(1990年12月~1994年7月)
調査日数・人員:のべ104日、のべ1131人
調査・保護活動費総額: 約13,720,000円(*)

(*) 調査・保護活動費はすべてNACS-Jに寄せられた寄付によるものです。約9000人の方が、これを支えてくれました(1人平均1500円計算)。ちなみ に、同等の調査・報告書作成費用を、一般企業で試算すると約1億3千万円かかるそうです。日本イヌワシ研究会のみなさんが全国各地から手弁当で集まってく ださったことと、NACS-J職員人件費や事務所費用はNACS-Jの全体経費で支えられているため、目に見えている金額以上の、とても大きな成果を出す ことができたのです。

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