絞り込み検索

nacsj

自然保護3団体、海上の森の長期保全と県道計画の見直しを要望

2004.03.30
要望・声明

2004年3月30日

愛知県知事 神田 真秋 殿

(財)世界自然保護基金ジャパン会長 大内 照之
(財)日本野鳥の会会長 小杉 隆
(財)日本自然保護協会理事長 田畑 貞寿


海上の森の長期的保全策と県道計画の見直しに関する要望書

貴職におかれては、目前に迫った愛知万博の準備に腐心されていることとお察しいたします。

さて私たち3団体は、1999年8月に海上の森の保全に関する要望書を貴職に提出しました。その結果として、貴職は2000年4月に通商産業大臣、博覧会協会会長と、新住宅市街地開発事業および都市計画道路計画の中止を合意され、またこれを受けて設置された愛知万博検討会議において、市民による博覧会計画の見直しが行われました。同年10月にヨルダンのアンマンで開催された第2回世界自然保護会議では、この決定を評価した上で、環境に配慮した博覧会の実施、海上の森の保護地域化を求める勧告が採択されました。今年11月には、タイのバンコクにおいて、第3回世界自然保護会議が開催される運びとなり、この勧告に対する政府・NGOの取り組みを報告する時期が迫っています。

愛知県が海上の森の長期的保全のため、里山学びと交流の森検討委員会を開催し、博覧会終了後の海上の森の保全利用に関する報告書をまとめるとともに、海上の森の管理を主管する部署を農林水産部と定め、新住宅市街地開発事業特別会計に計上されている土地を一般会計に移すなどの措置を決めたことについて、私たち3団体は前向きに評価しております。また、里山学びと交流の森県条例(仮称)の制定によって海上の森全域のゾーニングを行うとともに、保護上特に重要な地域について県自然環境保全地域とすることについても一定の評価をしております。しかし、世界自然保護会議の勧告が求める国レベルの保護地域設置を、愛知県が選択しなかったことについてはたいへん遺憾であり、この理由については愛知県が世界自然保護会議において、直接説明されるべきと考えております。

以上を踏まえ、第3回世界自然保護会議と愛知万博の開催を前に、海上の森の長期的な保全策と海上南地区における県道計画について、以下の通り要望します。

1) 里山学びと交流の森県条例(仮称)の制定にあたっては、愛知県は市民参加による透明性と説明責任を持った、条例制定のプロセスを採用すべきである。

里山学びと交流の森県条例(仮称)の制定にあたっては、将来の海上の森の保全と活用にかかわる市民の参加が不可欠である。里山学びと交流の森の後継組織に法制度の専門家を加えて条例要綱案を検討するとともに、一般県民に対するパブリックコメントなどの透明性と説明責任を持ったプロセスを経て条例を制定すべきである。このような先例としては、千葉県の三番瀬再生保全利用条例(仮称)の要綱案作成のプロセスや、長野県希少野生動植物保存条例の制定にあたってのプロセスが参考となる。海上の森において、このような市民参加による透明性と説明責任を持ったプロセスが採用されれば、全国の里山保全利用に対して、大きな影響を与えることであろう。

2) 海上の森南地区における、里山学びと交流の森の入り口施設となる駐車場および県道の建設は、ムササビやシデコブシなどが生息生育する森に多大な影響を与えるため、影響の回避低減のため計画を見直すべきである。

海上の森南地区には、2000年の愛知万博検討会議の時点で、政府展示施設および駐車場、県道が計画されていた。しかし2001年に会場計画が見直され、政府展示施設が西地区に移動した結果、駐車場と県道は愛知万博には必要のない施設となったため、里山学びと交流の森の入り口施設として必要という説明がなされてきた。その後2002年秋には、この地域にムササビが生息することが海上の森を守る会によって指摘され、博覧会協会が調査を行った結果、ムササビは南地区、西地区および隣接する吉田川流域を広く遊動していることが確かめられた。博覧会協会の海上地区会場計画モニタリング委員会において、県道の幅員11mは森に与える影響が多大であるという指摘がなされているにもかかわらず、愛知県は道路構造令を盾に県道計画を変更しようとしないのは遺憾である。ムササビが生息する東京都高尾山の参詣道は、都道であるにもかかわらず3m程度の幅員であり、ムササビと共存できる規模となっている。愛知県は、南地区の県道・駐車場の規模を見直し、ムササビやシデコブシが生息生育する森への影響を回避低減すべきである。

前のページに戻る

あなたの支援が必要です!

×

NACS-J(ナックスジェイ・日本自然保護協会)は、寄付に基づく支援により活動している団体です。

継続寄付

寄付をする
(今回のみ支援)

月々1000円のご支援で、自然保護に関する普及啓発を広げることができます。

寄付する