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2003.03.01

「ダムは原則として建設しない」~淀川水系流域委員会の出した結論

日本の川づくりは今、大きな変革期にあります。これからは、役所にお任せも批判するだけでもだめ。住民も含めて基本の部分から川づくりを考えようと改正河川法初の事例として始まったこの委員会に、NACS-Jも委員の一人として参加しました。

約2年間の議論の末まとめられた提言には、淀川水系の新しい方向性が示されました。琵琶湖の自然をどうとりもどしていくかという大きな課題も残っていますが、一歩前進といえます。

No.472(2003年3/4月号)より転載


1月17日、京都市内で第16回淀川水系流域委員会が開催され、提言「新たな河川整備をめざして」を国土交通省近畿地方整備局に提出しました。

■「ダムは原則建設しない」を明示

この提言には、特筆すべき点がいくつもあります。まず「川や湖の環境保全と回復」を重視し、従来、治水・利水を中心に語られてきたこの川の河川整備計画の優先順位を、環境、治水、利水および利用という順番に改めたことです。

これまで絶対的な優先性を求めてきた治水、水需要の拡大に応じて水資源開発を行なってきた利水についても、破堤による壊滅的被害を防ぎつつ自然環境に配慮した治水、水需要を一定の枠内に管理・抑制する利水に変えることを求めています。

 ダムについては、自然環境に及ぼす影響が大きいことなどから「原則として建設しない」と、はっきり明示しました。建設は、ダム以外に有効な代替案がないと「客観的に認められ」、住民団体(NGO・NPOを含む)や地域組織などの「住民の社会的合意」が得られた場合にかぎり実施するとしています。この表現をめぐっては大きな議論がありました。当初「ダムは原則として抑制する」というあいまいな表現でしたが、委員全員にアンケートで意見を求め、最終的に「原則として建設しない」という表現に決まりました。さらに、新規のダムだけでなく計画中・工事中のダムもこの原則に従うことを明確にするため、「計画中・工事中のものを含め」の文言も加えました。

 

■オープンな議論が結論を導いた

流域委員会がこのような結論を出せたのは、「今後の公共事業計画づくりのモデルケースに」と委員の人選から情報公開まで、これまでの審議会方式とはまったく異なる委員会運営がなされてきたからです。(『自然保護』2002年1/2月号参照)

 流域委員会は、1997年に改正された河川法に基づいて、河川管理者が「河川整備計画」の作成にあたって学識経験者の意見を聴く場として設置が始まりました。淀川水系では2001年2月に立ち上げられ、治水・利水などの専門家のほか、地域の特性に詳しい人を一般から公募して、合計55名からなる委員会と部会で提言案が検討されてきました。

 

■新しい川づくりのモデルに

今後この提言をもとに、近畿地方整備局が河川整備計画の原案作成に取りかかります。淀川水系には、現在5つのダム計画(図)がありますが、これらが計画づくりのプロセスを経てどう見直されるか期待されます。すでに紀伊丹生川ダム(和歌山県)が河川整備計画によって建設中止となりましたが、余野川ダム(大阪府)が中止されれば、工事中のダムが河川法の正式なプロセスで中止される初めての事例となります。

図:
淀川水系流域委員会の各部会が取り扱う流域範囲
淀川水系流域委員会は、委員会と3つの部会(琵琶湖、淀川、猪名川)から構成されている。現在、淀川水系には大戸川ダム(滋賀県)、天ヶ瀬ダム(京都府)、川上ダム(三重県)、丹生ダム(滋賀県)、余野川ダム(大阪府)の5つのダム計画がある。

これまでダム・堰は、各地の自然保護運動のほか、長野県知事の脱ダム宣言や、吉野川の住民投票などによって見直されてきましたが、河川法の正式なプロセスで見直しが行なえるようになれば、時代の変化で不要となった計画を市民参加によって見直すツールが、また一つ増えることになります。

 

※提言は、淀川水系流域委員会のホームページで見られます。
http://www.yodoriver.org

(吉田正人・常務理事)

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