日本自然保護協会は、生物多様性を守る自然保護NGOです。

徳山ダム建設問題と猛禽類生息地保全

Home なくなりそうな自然を守る 徳山ダム建設問題と猛禽類生息地保全 ニュース&トピックス 「猛禽類調査、影響評価、保全対策は、事業者の判断のみで実施せず、専門家の客観的な判断を尊重すべき」

徳山ダム建設問題と猛禽類生息地保全 ニュース&トピックス 一覧に戻る

2000.03.14

「猛禽類調査、影響評価、保全対策は、事業者の判断のみで実施せず、専門家の客観的な判断を尊重すべき」

NACS-Jは3月14日、熊本県の川辺川ダム建設事業と岐阜県の徳山ダム建設事業に関する意見書を提出し、同日午後、環境庁記者クラブで記者発表を行いました。

発表者席にはNACS-J保護研究部長の吉田をはじめ、「クマタカを守る会」、「川辺川ダム環境アセス請願実行委員会」、「熊本県クマタカ調査グループ」、「美しい球磨川を守る市民の会」、「自然観察指導員熊本連絡会」、「子守唄の里・五木を育くむ清流川辺川を守る県民の会」といった地元熊本県のNGOの代表の方々が並びました。

NACS-Jでは川辺川ダム建設事業に対しては、「ダム予定地周辺でのクマタカ調査結果を公表し、影響評価、保全対策を、専門家の客観的な関与のもとで検討すべき」とした意見書を、建設大臣及び環境庁長官に提出しました。

また同日、岐阜県の徳山ダム建設事業に対しても、「猛禽類調査、影響評価、保全対策は、事業者の判断のみで実施せず、専門家の客観的な判断を尊重すべき」という内容の意見書を、水資源開発公団総裁、建設大臣、環境庁長官あてに提出しました。

いずれの事業も数十年前に計画された大型の公共事業で、本体工事の着工が目前に迫っています。NACS-Jはこれらの事業による地域の自然環境への大きな影響を懸念し、計画の見直し、工事を一時中断しての詳細な調査等を求めています。

平成12年3月14日

水資源開発公団総裁 近藤 徹 殿
建設大臣    中山正暉 殿
環境庁長官  清水嘉与子殿

(財)日本自然保護協会会長 沼田 眞

徳山ダム建設予定地周辺の猛禽類の保全

に関する意見書

徳山ダムの建設が予定されている揖斐川上流域には、イヌワシ、クマタカなど、環境庁のレッドデータブックの絶滅危惧種、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の政令指定種に指定されている猛禽類にとって良好な生息環境が残されています。

当協会は、水資源開発公団と、「岐阜県揖斐川上流域徳山ダム建設計画に関わる大型猛禽類調査資料の適正公開等に関する協定書」を結び、昨年12月7日、「徳山ダムワシタカ類に関する資料」および「(財)日本自然保護協会『添付資料』」を公開しました。

同月10日、水資源開発公団は、「(財)日本自然保護協会『添付文書』に対する水資源開発公団としての見解」を発表し、「実務者としての水資源開発公団としての立場に立てば、全てのご意見を受け入れることは極めて困難」、「徳山ダムは(治水・利水のため)必要不可欠な施設」、「完成工期の遅延は(事業費の増嵩、治水効果の遅れを招くので)許されるものではない」という立場を表明しました。

さらに今年2月29日、水資源開発公団は、「徳山ダム周辺の希少猛禽類とその保全(第I編希少猛禽類に関する調査結果と保全対策、第II編(財)日本自然保護協会との協定に基づく調査資料の適正公開と『添付文書』に対する考え方)」を発表しました。この中の第II編において、当協会が『添付文書』で指摘したいくつかの項目について追加的な解析を実施しつつも、一方で第I編では希少猛禽類の影響予測、保全対策を示すことにより、本体工事に着手しようとしています。

これについては以下のような問題があります。

 

  1. 当協会は『添付文書』において、「徳山ダムにおける猛禽類調査は、地域の生息状況を把握したいわゆる『スクリーニング調査』ができた段階であるのが現状であると考えられ、解析に十分な調査がなされたとはいえない状況にある。一度全ての計画及びそのスケジュールを見直し、自然保護と開発活動に関わる自然環境調査のあり方を議論すると共に、猛禽類の地域個体群としての環境保全に必要な措置とその根拠とは何かを議論すべきといえる」と指摘した。しかし、水資源開発公団が2月に発表した「徳山ダム周辺の希少猛禽類とその保全」
    は、調査段階をとびこえ、影響評価、保全対策の段階にまで一気につきすすもうとするものであり、同公団が掲げる「治水・利水と環境保全の両立」という基本姿勢に反するものである。
  2. 影響評価、保全対策には30ページほどが充てられているが、この影響評価、保全対策を妥当と判断した専門家の氏名が全く記載されていない。水資源開発公団が委嘱していた徳山ダムワシタカ類研究会委員は4名のうち3名が辞任し空中分解状態にあり、また今後委嘱予定の徳山ダム環境保全検討委員会は発足前であるため、この影響評価、保全対策は同公団が事業者の立場で自ら判断し記述したものと考えられる。このような猛禽類の専門家のチェックを経ていない影響評価、保全対策を発表することは、「自然生態系の頂点に存在すると同時に個体数の減少が危惧されている希少猛禽類の生息環境の保全が極めて重要であることに着目して、その専門家の知見の吸収に努め、効果的な保全対策の立案に努めてきた」という同公団の希少猛禽類保護への取り組みの努力を無にするものである。

ついては、当協会は事業者である水資源開発公団総裁、ならびに監督責任を有する建設大臣、希少猛禽類の保全に責任を有する環境庁長官に対し、以下のように意見を申し述べる。

 

  1. 水資源開発公団総裁は、徳山ダム本体工事にともなう入札手続き等を一時中止し、猛禽類に関する調査報告書の作成および影響評価を正しくやり直すべきである。また猛禽類調査、影響評価、保全対策は、事業者の判断のみで実施するのではなく、猛禽類専門家の客観的な判断を尊重すべきである。
  2. 建設大臣は、水資源開発公団に対して、猛禽類調査の追加等の不備の是正、影響評価と保全対策のやり直しを指示すべきである。とくに影響評価にあたっては、建設省に影響評価審査会を設置し、猛禽類の専門家の客観的な判断が、今後のダム建設事業に対しても担保されるようにすべきである。
  3. 環境庁長官は、希少猛禽類の保全に責任を有する立場から、水資源開発公団の希少猛禽類調査の結果を入手し独自に分析して技術的助言を行うとともに、調査が適切に実施され、影響評価ならびに保全対策が妥当であると認められるまでは、ダム本体工事に着手しないよう、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存法に基づいて、必要な助言又は指導を行うべきである。

徳山ダム建設問題と猛禽類生息地保全 ニュース&トピックス 一覧に戻る