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「経済・社会の変化に対応した港湾の整備・管理のあり方(中間報告)」への意見

1999.10.05
要望・声明

1999年9月8日

(財)日本自然保護協会
研究部長 開発法子

自然保護の視点から

以下のように意見をのべます。

 

1.現在、日本の干潟はその多くが消失し50年前の6割しか残されていない。また、自然海岸は本土では45%しかない。中間報告にもあるとおり、自然の干潟や自然海岸の果たすかけがえのない生態的機能(水質浄化・生物生息環境・生物生産等)、社会的機能(レクリェーション・教育・景観等)に鑑み、港湾づくりにおいては、環境保全上、現存する干潟及び自然海岸は改変を加えず保全することを原則とすべきである。

2.これまでの干潟の消失原因で最も多いのが埋め立て(42%)である(第4回自然環境保全基礎調査,1994)。(財)日本自然保護協会の「全国の主な干潟の現状調査(1998)」によると、少なくとも日本の主な干潟36カ所のうち半数以上の干潟が、埋め立てや港湾施設等の開発計画により危機にさらされている。埋め立ては不可逆的な自然の改変であり、埋め立てで失われた干潟・浅瀬は機能的にも、歴史的にも人工的な技術で再生できるものではない。現存する自然の干潟・海岸を未来に引き継ぐために、港湾整備における埋め立ての制限、港湾審議会における環境面でのチェック機能の強化が必要である(例えば、環境庁や環境分野の専門家・NGOをメンバーに含む権限を持った環境専門部会を設置する)。

3.第3章第4節1に関連して、経済・社会の変化に対応して「時のアセスメント」を導入し、現在計画あるいは着工されている全国の港湾計画を、自然保護の観点からのチェックを含め、見直す必要がある。
例えば、東京湾三番瀬における京葉港二期地区計画は、1992年港湾審議会計画部会で計画決定された。が、千葉県は、環境保全の観点から、またその後の社会・経済情勢の変化に対応して事業の必要性について見直し、現在大幅に計画を縮小しているところである。

4.第3章第2節4にあるように、港湾計画の策定にあたっては、地域住民や専門家の意見を幅広く集め、反映させていく必要がある。そのためには、全国計画、地域計画、個別の港湾計画のそれぞれの段階において意見を聴く具体的な仕組みを作るべきである。特に、防災やパブリックアクセス、環境保全の面については、市民やNGO、研究者等からの意見が重要である。 また、意見を集めるにあたっては、計画の早い段階での情報公開が保障されなければならない。

5.第3章第3節にある環境保全、環境の回復に関する取り組みの推進にあたっては、 環境基本計画や生物多様性条約に基づき、関係機関と十分協議して環境保全・回復の目標を設定して行うべきである。特に東京湾等内湾域の環境回復への取り組みは急務である。
また、エコポート事業は既設の港湾の再整備にあたって積極的に導入を推進すべきである。エコポート事業を実施する際には、地域住民や環境分野のNGO、研究者を含む検討会を設置し、市民の意見を幅広く集め、施設整備のハード面だけでなく管理や利用のあり方などソフト面についても十分検討することが重要である。ソフト面のノウハウについては、当協会のような自然保護NGOに蓄積が多い。既に高知県手結港におけるエコポート事業では、当協会も関わりソフト面も含めた検討が進んでいる。エコポート事業は地域の自然と共生した豊かなまちづくりに貢献する計画とすべきである。

6.港湾は、海上交通を利用する場合の海への入り口となる。島嶼地域への船便や海洋レジャー船が発着する港に、その地域の海の自然や文化、産業を学ぶ環境教育の場の機能を持たせることを提案したい。例えばビジターセンターのようなコーナーや施設の設置、指導者の配置が考えられる。今問題となっているプレジャーボート等海の利用のルールを利用者に身につけてもらう上でも、港湾において海の自然に対する理解を深める機会を提供することは重要である。

7.今年5月の「海岸法」の改正に先立ち発表された「海岸管理検討委員会」の「海岸管理のあり方についての提言」を踏まえ、海岸管理に関わる他省庁と密に連携をとり協議し、国民や環境分野のNGO、専門家の意見を十分に聞きながら海岸の環境保全を計画的、総合的に強く推進するよう要望する。

 

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