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千歳川放水路計画

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1997.10.01

あと一歩で中止できる千歳川放水路

 

=月刊『自然保護』No.420(1997年10月号)より転載=


 

 「とりかえそう北海道の川」フォーラム実行委員会 小野有五

■ついに予算凍結が宣言される 河川にかかわるものとしては日本最大の公共事業である千歳川放水路計画がいよいよ止まろうとしている。1997年1月7日には、計画を推進してきた北海道開発局の北条(前)局長が計画の見直しに初めて言及し、5月26日には衆議院予算委員会で亀井静香建設大臣が、15年以上かかっても地元の合意が得られない計画に毎年20億円もの予算をつぎこむことはできないとして、ついに今年度予算の半分凍結を宣言したのである。
■放水路に固執してきた治水方法 千歳川放水路は、石狩川と千歳川の合流地点で起きる洪水対策のために、日本海に流れ出ている千歳川を、洪水時だけ太平洋に流す巨大な人工水路を建設するという計画である。亀井建設大臣の発言には、地元の合意が得られないなら、そういう地域にいつまでも治水対策がなされず、放置されても仕方ない、というニュアンスがある。事業がほしいと拝んでくるところにしか事業はつけない、という族議員側からの脅しがあり、今年度予算の半分凍結という空前の処理も、単純に喜べるものではない。それでも、建設大臣がそこまで処置をとらざるを得ないところに追い込まれた、という事実は重いであろう。すでにNACS-J千歳川問題専門委員会の第二次報告書で述べたように、千歳川放水路計画は、3年前に開発局が『千歳川放水路計画に関する技術報告書』を北海道知事への回答として出した時点で中止すべきものであった。数百ページにのぼるこの報告書は、放水路のもつ治水効果だけを書き連ねた一方的な文書にすぎず、知事から求められた自然保護や漁業への悪影響対策に関しては、なんら現実的な対策案を提示できなかったからである。

それにもかかわらず、開発局はその後の3年間も千歳川放水路計画に固執し、それが唯一の治水対策であると地元住民に宣言してきた。そして、もはや自分の手で計画が推進できないとしると、北海道にその推進役を押しつけ、なんとか打開の道を探ろうとしている。

北海道は、関係者を集めた「円卓会議」の召集を呼びかけたが、これは「反対派も同じテーブルについてご理解いただいた」という実績づくりをねらったものであり、漁業団体や自然保護団体の参加を得られず失敗してしまった。もし早い時期に円卓会議が開かれていれば、亀井建設大臣による予算凍結もあり得なかったであろう。

 

■公正な合意形成の場を 現在、北海道は円卓会議に代わるものとして、専門家による検討委員会を設置しようとしている。個別に意見を聴取し、それを委員会にまとめて、合意可能な案をつくろうとするものである。この方法にも問題は多い。まず、委員会の公正性や公開性が保証されなければならないし、さらに委員会がどのような権限をもち、また委員会の凍結がどのように扱われるのかが明確にされなければならない。「住民合意が得られない限り、千歳川放水路計画には着工しない」というのが横路(前)知事から与えられている条件なのであるから、委員会は、合意が得られないことがすでに明らかになっている放水路計画について、検討するのではなく、早期の着工が可能な「放水路に代わる治水対策」のための住民合意を目指すものでなければならない。自然環境を破壊する大規模公共事業が、事業者の手を離れた委員会で討議され、そのなかで住民合意がはかられれば、これまでにない意思決定プロセスである。千歳川放水路計画に反対してきた私たちとしては、徹底した情報公開と住民参加を通じて公正な合意形成がはかられるよう、最後まで発言していきたいと考えている。会員の皆様のご支援をお願いしたい。 
*「とりかえそう北海道の川」フォーラム実行委員会

97年3月に、札幌で「環境フォーラム・とりかえそう北海道の川 ストップ・ザ・放水路&ムダなダム」を開催。本多勝一、筑紫哲也、野田知祐、藤門弘の各氏が講演。全道から1600人が参加した。

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