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新潟・奥只見猛禽類生息地の保全

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1997.09.01

「厳しい付帯条件で調査のやり直しに」

1997年9月号より転載


 

首都圏のための奥只見の発電所計画 猛禽類問題で足踏み必至

新潟県・奥只見—ここでは、イヌワシやクマタカの優良な生息地の中に、揚水発電所が計画されてきた。7月30日の政府電源開発調整審議会(通称・電調審)は、環境庁も含めこの計画自体は承認してしまった。しかし、電調審直前にNACS-J保護研究部が緊急の見解公表などで働きかけた結果、環境庁はイヌワシやクマタカの生息地保護のため異例の付帯条件をつけ加えた。

湯之谷揚水発電所経由で送られる180万キロワットの電気は、原子力発電所でつくられ、主に首都圏で使われるものだ。また2つつくられるうち下側のダムは新潟県のダム事業でもある。

発電所建設にかかわる自然保護問題は、電調審の前に、事業者による調査に基づいて自治体が審査し、さらに環境庁がチェックすることになっている。

しかし、NACS-J保護研究部が、事業者の調査結果と保護研究部の緊急調査記録や地元会員の観察記録を比べたところ、事業者である特殊法人電源開発(株)の調査は見落としが多く、十分な科学的検討をせずに影響は少ないと結論を出していたことがわかった。たとえば計画地と周辺で、イヌワシ3つがいのほが、クマタカ・オオタカ・ハチクマ・ハイタカなどの猛禽類が生息していることは両者とも確認している。ただし、クマタカの繁殖の可能性を示すディスプレイ(誇示行動)や、イヌワシの狩りをしている行動が、事業者の調査ではまったく把握されていなかった。

保護研究部ではこのような事業との違いを文書にまとめ、6月26日、一斉に関係機関に送り、市民団体や報道機関にも公開した。この指摘を受けて、その後あいついで開かれた新潟県議会議員の勉強会や「公共事業チェックを実現する議員の会」に、地元自然保護団体とともに招かれたNACS-J横山保護部長は、このままでは希少猛禽類の生息に大きな悪影響を与える恐れが大きいので、安易な判断は避けるべきだと主張した。データ不足の報告をもとに審査しなければならなくなった新潟県知事は、電調審開催の直前に、電源開発には異議なし、ただし自然には「最大限の配慮を」などの言葉を盛り込んだ意見をようやく発表した。

7月30日の電調審で、この発電所計画は20年後の運転開始をめざして手続きが一歩すすんでしまった。しかし、環境庁が異例の付帯条件をつけたことで、99年3月の工事着工までの約2年間は調査を継続して行い、結果を行政や専門家などに報告し、対策を講じること、クマタカがディスプレイをし、イヌワシが餌場にしていた山を原石山(ダムサイトをつくる岩をとる山)にする計画も変更の可能性も含めるといった具体的な再検討項目が設定された。NACS-J保護部では、8月30日に開催される新潟県の自然観察指導員の壮快でこの問題を解説し、今後の対処の仕方について相談することにしている。

 

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