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1995.09.01

士幌高原道路、審議会が了承 今後、判断は環境庁の手に

NACS-Jは環境庁長官に意見書提出

=月刊『自然保護』No.399(1995年9月号)より転載=


 

7・8月号(1995年)の「解説」のコーナーで取りあげた北海道の士幌高原道路の問題について、NACS-Jは6月12日に環境庁長官に意見書を提出した。

これは、士幌高原道路の未開通部分をトンネルにして通過させるという環境庁の案が、5月30日の自然環境保全審議会に諮問され、付帯意見はついたが計画案のまま環境庁長官に答申されたことに対するものである。NACS-Jは、環境庁に対してこの道路計画への適正かつ慎重な判断と、自然公園法の目的に「生態系と生物多様性の保全」を組み込む法改正など自然公園行政の改善を求める意見書を提出した。

今回、自然公園法の改正にまで踏み込んだ意見書を提出したのは、この問題に限らず国立公園内の保護問題の多くが解決されない理由の一つが、自然公園法の目的が「景観の保全」であるためと考えるからである(くわしくは本誌7・8月号「解説 士幌高原道路に見る日本の国立公園の弱点」参照)。

今後、判断は環境庁の手へ

大雪山国立公園の南端に位置する士幌高原道路の計画変更案は、大雪山国立公園全体の保護計画とともに審議会で審議された。22年にわたって中断されていたこの問題の検討のために、審議会は異例の現地視察・地元関係者からの意見聴取を行った。

審議の結果、3つの付帯意見をつけた上で計画変更は承認され、答申書が環境庁長官に提出された。付帯意見は、

1)トンネルルートの地形・地質は未解明な点も残されているので、慎重に調査検討を行う。

2)工事や開通後の排ガスが、自然環境に及ぼす影響を自前に検討し必要な対策を講ずる。

3)山岳と湖沼と亜高山植生の優れた自然環境を構成する然別湖畔地区は適正な保護のもとに、特性を踏まえた適正な利用に努める-の3点。

審議会での審議が終了したことで、この問題の判断は環境庁に委ねられる段階に移された。

着工までには、まだいくつかの手続きが残されている。この道路は国立公園としての事業ではあるが、道道なので工事正体は北海道である。北海道が調査や設計を行い、再び自然環境保全審議会に諮問される。また、国立公園内なので調査にはそのつど環境庁の許可も必要である。北海道は2、3年後の工事再開を目指して作業をすすめる考えという。

日本の国立公園制度の弱点

これまで本誌で何度か取りあげているとおり、未開削部分(2.44km)をトンネルにすることでは、この道路の問題は解決しないというのがNACS-Jの考えである。今回の意見書で指摘したとおり、トンネルにすることで守られるのは景観だけであり、トンネルにする生態系への影響は予測できていない。しかし、日本の自然公園制度が景観重視の制度である限り、審議会としてはトンネル案を認めざるを得なかったと考えられる。そこで、”条件”という形で、少し踏み込んだ要望をしたとみられる。

さらに自然公園制度のもう一つの限界のために、士幌高原道路は犠牲にされたとも言える。日本の国立公園は土地を所有していなくても指定できるので環境庁が所有する土地はわずかしかなく、地元自治体の協力なしには保護計画は進められない。その自治体が望む道路計画を拒んでは保護計画も進まないのが現実となっている。そこで日本で一番大きな大雪山国立公園(23万894ha)の保護計画を進めるために、南端を通る2.44kmの道路計画を認めたと考えられるからである。今回の保護計画の見直しは、1934年の大雪山国立公園の指定以来初めてである。

今後NACS-Jでは、自然公園制度の見直しと、トンネルによる自然への影響の判明とそれに基づいて計画実行が慎重に判断されるよう、働きかけ続けていきたい。

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