絞り込み検索

nacsj

資料集その5 エコツーリストのガイドライン

1994.08.01
解説

1. 訪れる土地の文化を尊重する
それぞれの土地には、それぞれ歴史をもった固有の文化が育まれている。旅行者は、自分のライフスタイルをそのまま背負って訪れ、「必要以上の快適性を強要しない」。「現地の習慣を尊重し」、「自分の文化的価値観を押し付けない」態度が求められる。むしろ訪れる土地の文化・習慣を理解するために、住民が許す範囲で積極的に伝統行事などに参加して、自ら学ぼうとする行動が奨励される。

2. 訪れる土地の自然環境に悪影響を与えない
(1) 野生生物の生活を乱さない
旅行者自身が常識的に判断できることとして、「大声を出さない」とか、「野外活動に相応しい服装を整える」といったことが考えられるが、可愛いからといって「野生生物に極端に接近しない、追い回したり、抱き上げたりしない、餌を与えない」という態度も大切である。野生動物への接近については対象となる動物種によって、それぞれ異なった距離が設定できるが、旅行者にこのような知識を求めるのは無理であるから、ガイド役のレンジャーあるいは地元ナチュラリストの「指示に従うマナー」が求められる。また、長い時間をかけて形成されてきた「貴重な植物群落を踏み荒さない」こともわすれてはいけない。

(2) 保護されている生物の採集をしない
訪れた土地での保護されている個々の動植物種のすべてを知っていること、そしてそれらの同定能力を備えていることを、旅行者に求めることは無理である。したがって、「原則として動植物の採集はしない」という基本的な態度が必要である。また、旅行前に企画者から提供される「保護されている生物」の一覧表などを、事前学習しておくことは意味がある。現地では、ガイド役のレンジャーあるいは地元ナチュラリストの「指示に従うマナー」が求められる。

(3) 保護されている生物とその製品を買わない、持ち帰らない
保護されているために高価に密売されている生物やその製品がある。観光客が、保護されている生物やその加工品を買うことは、その生物を絶滅に追いやることに手を貸す行動である。(2)同様、訪れた土地では何が保護されているかという判断は、ツアーコンダクターに確認する態度が必要である。一方、伝統的な工芸品などに、その土地の自然を持続的に管理しながら利用している生物材料が用いられていることがある。何を土産として購入すれば、現地の人々の生活を支え自然の持続的利用の手助けになるのかという「賢い選択眼をもつ」ことが必要である。

(4) ゴミを投げ捨てたり、土や水などを汚さない
持っていった物は必ず持ち帰る。持ち帰れないほどの物は持ち込まない。持ち帰るための費用負担を前もって計算に入れる。物を土に埋めたり、水に流したりしない。

3. 訪問する地域を事前に学習するよう努める
旅行に参加することを決めたときから、その旅行は始まっているといえる。出発の前日までに、訪問する地域の事前学習をする作業は、エコツアーの重要な過程である。

4.旅行の経験を通じて環境問題を考える
訪問者は、旅行中に体験した現地での生活、触れ合った人々のライフスタイル、そして観察した自然の様子などを通して、「自らの日常生活を振り返り、環境問題を考える」人となるように努める。

5. 自然とのふれあいを尊重し、自然とともに生きるライフスタイルを身につける

自然とふれあい共感する体験、自然を観察し発見する体験、自然のなかで生活することによって自分自身がリクリエイトされる体験、野生動物の生活に触れることで得られる感動 ―― そのすべては、旅行者の生活設計の中に生涯教育の一貫としての文化遺産および自然の探訪を位置づけるようになっていくであろう。このような体験を通して貴重な文化遺産および自然を保護する態度を身につけるよう努める。

→ 旅行企画者およびツアーコンダクターのガイドライン

前のページに戻る

あなたの支援が必要です!

×

NACS-J(ナックスジェイ・日本自然保護協会)は、寄付に基づく支援により活動している団体です。

継続寄付

寄付をする
(今回のみ支援)

月々1000円のご支援で、自然保護に関する普及啓発を広げることができます。

寄付する