2008年12月赤谷の日レポート

12月赤谷の日レポート(2008年12月6−7日)

たくみ小屋でのミーティング 冬の木の実と言えばツルウメモドキ いきもの村の様子 今回設置した煙突

炭焼き

 今回で通算4度目の炭焼きです。今回から木酢液を採取するための煙突を設置してあります。炭焼きの作業にはかなり慣れてきました。1)材をなるべく均一に詰める。2)炭窯に点火し火が窯全体に回るまで根気良く火を炊き続ける。3)火が回ったところで窯口にふたをする。その後は煙の様子を見ながら、窯口を補強していきます。
 今回の材は、いきもの村周辺で間伐した広葉樹です。大きさを整える作業には、赤谷集落の林元保 師匠にも来て頂きました。太い材を縦に割る作業は、毎年やっていますが、残念ながらなかなか上達しません。。。もう少し鍛錬が必要なようです。材を詰める作業は順調に終わり、日の高いうちに着火できたのですが、やはり炭窯に火が回るまでには、かなり時間が掛かってしまいます。今年は炊き続けている火を利用して焼き芋をしながら、のんびりと火を炊き続けました。結局、火が回り、窯口を蓋をする頃には、日が暮れてしまいました。  真っ暗の中、ライトで照らしながらなんとか炭窯を閉じるところまで終わり、明後日(8日)の朝に窯の煙突を閉じて終了です。(NACS-J出島)

なれない作業に挑戦中 林元保さん 窯詰め作業にすっかり慣れた藤代さん

↑左)慣れない作業に挑戦中   中)林元保師匠   右)材を窯に詰める作業を終えて少し疲れ気味の藤代さん

炭窯の煙突もなるべく間伐材や自然素材で組んでいます 炭窯内に火が回るまでのんびりした時間です 窯口に蓋をする作業を率先して行う笛木師匠

↑左)フジで止めた煙突の橋脚   中)窯の中に火が回るまでの間はのんびりした時間です   右)夕方に笛木師匠も来て頂きました。

赤谷の日翌日の8日、炭窯の口を塞ぐタイミングを笛木師匠に携帯で連絡を取り、朝7時30分に塞ぎました。木酢液は概ね40リットル程度とれたようで、数名に方がペットボトルに入れて持ち帰って貰いましたが、まだ20リットルほど残っています。(赤谷センター石坂)


テンモニ隊(ホンドテン・モニタリング)

伐採されたスギの年輪を観察↓

アズマモグラのサンプルの内容物

1.ムタコ林道

 テン:6サンプル、食性はサルナシのみ2サンプル、サルナシ+ツルウメモドキ2サンプル、動物食1サンプル(アズマモグラ?)、不明1サンプル。
 今年は、10月以降サルナシ食のサンプルが多い印象でしたが、12月になってようやく「赤谷のテンの食文化たる?ツルウメモドキ」を食したサンプルを採取しました。しかしながら調査ルートでは、人工林の伐採がありテンの行動に何らかの影響を与えている可能性があります。

2.小出俣林道

 テン:11サンプル
 小出俣林道では、常にサンプル採取数が少ない状態が続いていましたが、今月は11サンプルを採取できました。しかも、調査ルートで満遍なくサンプル採取が出来ました。調査開始地点から東京発電の調整池までで、5サンプルを採取し、それ以降調査終了地点までに6サンプルを採取しました。特筆すべきは、カラマツ漸伐地で2サンプルを採取したことでしょうか。ここでのサンプル採取は、ほとんどない状態が続いていました。カラマツ漸伐地の環境は、伐採により明るくなり、一般的にはネズミ等の小型哺乳類の活動が活発に行われていると想像していたのですが、今回採取されたサンプルは、ツルウメモドキでした。なんでそうなるの?でした。食性は、ツルウメモドキを中心に鳥を食したサンプルも1つありました。なぜ、この季節に鳥なのかも?です。

3.雨見林道

  テン:1サンプル
 食性はサルナシ+その他(サンプルが凍つていたのでサルナシ以外に含まれている食動植物は確認できませんでした。)雨見林道の調査開始地点以前(北群ファーム入り口より下部)で1サンプルを採取しました。食性はケンポナシでした。雨見林道も人工林の伐採があり、テンの行動に影響があると考えられます。通常ルートで1サンプル採取のみでは、あまりにも少なすぎます。

雨見林道での伐採後の様子 ムタコでのサンプリングの様子 アズマモグラ?のサンプルの内容物 アズマモグラ?のサンプルの内容物

↑左:雨見林道付近の伐採の様子  中左:ムタコでのサンプリングの様子  中右と右:採集したサンプル(アズマモグラ?)

4.赤谷林道

  テン:13サンプル、食性は、ツルウメモドキが主でした。

まとめ

 今年の赤谷の10月から12月にかけては、テンの食性はサルナシ食が多く、動物食は少ない傾向でした。これまで11月には「赤谷のテンの食文化?」のツルウメモドキのサンプルが採取されていましたが、本年はサルナシ食のサンプルが中心で、12月にやっとツルウメモドキ食のサンプルを採取することが出来ました。今年は、サルナシが豊作だったのではないかと考えられます。また、ムタコ林道及び雨見林道については、人工林の伐採があり採取サンプル数に影響を与えていると考えられます。
 さて、「赤谷エリアにおけるテンの食文化?」について言及すれば、例年11月頃にはツルウメモドキを好んで食しているようでしたが、今年はその傾向はありませんでした。10月以降サルナシ食が中心でした。しかしながら、12月以降はツルウメモドキを中心に食している傾向にあると考えられます。実際、私が10月頃のツルウメモドキを食した時よりも、12月に食した時の方が甘く感じられました。一般に、冬の農作物でも(白菜、ネギ、ブロッコリー、チンゲンサイ等)は、寒さを感じると甘味が増す傾向にあります。更に、本年12月に赤谷エリア(赤沢林道)でサルがツルウメモドキを食している画像も報告されており、赤谷のテンにとっても冬の食植物としてツルウメモドキが重要であると考えられます。(サポーター鈴木)


南ヶ谷湿地調査

 夏の間生きものたちに満ちていた南ヶ谷湿地も、草は枯れ木々は葉を落とし、雪を待つばかりのたたずまいを見せていました。気温3.3℃。11月に大量にあった熊フン の名残かのように、少し古めのフンが所々に落ちていました。冷たく静かに光る水底には落ち葉が沈んでいます。網ですくうと、オニヤンマなど数種のトンボのヤゴやカワニナなどが見つかりました。この落ち葉を綴り、中に潜んでいる水生昆虫の姿もあります。こうしてたくさんのいきものたちが水底で冬を越すのでしょう。

採集したヤゴなど 南ヶ谷湿地の湧水エリア オニヤンマのアゴを観察

 今回は水質検査の道具を持参しました。この湿地の水は、湿地の北東の山側から湧き出す水によってまかなわれていることが調べられています。湧水ポイントは7ヶ所確認されていて、ひとつひとつはわずかな水量に見えますが、集まって流れをつくり湿地をうるおしています。この湧水より下方に平らな土地が広がり湿地をつくっているのです。地形から見て、どうやらこの平らな地形の起源は地すべりのようです。地すべりの頭部分の下から水が湧き出していると考えられます。周囲には地割れのような地形もたくさんみられます。

見上げるとクマ棚があちらこちらに ナニモノカに食べられたスゲ  ところで、平らな部分には普通ならば土砂が積もり木がはえてきそうです。そうならずに草がはえミズゴケまで育っている理由のひとつが、今回の水質測定から推測できました。測定したのは電気伝導度とpH。電気伝導度は水に含まれるイオンの量が多いか少ないかを示すものです。植物の栄養になる肥料分はイオンになりますから、肥料分が多ければ数値は高くなります。湿地はどうだと思いますか?貧栄養に育つというミズゴケやモウセンゴケが見られる場所・・・もちろん低い値でした。湧き出している水が少しのイオンしか含んでおらず、また栄養分の多い沢の水の流れ込みもなく、その結果湿地が貧栄養になっていったわけです。
 ところで湧水といってもイオン量が少ないとは限らず、多い湧水はたくさんあります。そんな場所では安定した湿原はできないといいます。水道水でさえも湿原を維持するにはイオンが多すぎるのです。南ヶ谷の湧水は、何とか湿原の維持ができるのではという値を示していました。水のpH(酸性・アルカリ性の程度)はほとんど中性。ミズゴケの育つ部分は、わずかですが他の場所より酸性に傾いていました。一年中絶えることなく流れ込む貧栄養な水があり、しかも大雨でも土砂や大量の水の流れ込まない地形という微妙なバランスのうえに成立した湿地、南ヶ谷湿地はどうやらこんな条件でできた湿地のようです。(サポーター和田)


写真/文:鈴木誠樹、平井希一、青木邦夫、和田晴美、石坂忠、茅野恒秀、藤田卓、出島誠一

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