2008年9月赤谷の日レポート

9月赤谷の日レポート(2008年9月4−5日)

ウドとヒョウモンチョウの仲間 エダナナフシ
ヨツスジハナカミキリ ハイイロチョッキリ

↑(上左)ウドで乱舞するミドリヒョウモン 等 (上右)エダナナフシ (下左)ヨツスジハナカミキリの交尾 (下右)コナラの中にあったハイイロチョッキリの卵


南ヶ谷湿原調査

 午前中は多くのミドリヒョウモンが日光浴する秋の陽の中、大峰林道を湿地に向かった。
 ゴイシシジミ、ヒメウラナミジャノメなどが飛翔し、アキアカネなどがそこここの枝先にとまっている。湿地に到着した12:30頃より空模様が急変。遠くで雷鳴も聞こえ始めたので、食事もそこそこに調査を開始。気温23℃だが湿度が異常に高く、体中がじっとりとしてくる。
 8月下旬に雨が多かったためか湿地も流出している流れも水位は高い。水温は流れがあるところでは11〜13℃、湿地内部では20℃。ヤゴ、カワゲラなど水中昆虫を採集。ホタルの餌である巻貝類は採取できず。ヤンマ類が湿地のあちらこちらで産卵行動をしている。モリアオガエルの上陸状況を確認しようとするも、どの岸にも見当たらず、約2cmの幼生ただ1頭が湿地内部のヨシの葉1.2mぐらいのところに昼寝をしていたのみ。8月に見つけた幼生よりふたまわりほど大きくなっている。
 湿地内には8月にはなかった、「けものみち」らしい踏み跡が縦横にできており、湿地内の植生への影響が気になった。植物はアケボノソウ、ウメバチソウ、サワギキョウ、ミゾソバが開花最盛期。2ヶ所のセンサーカメラの電池・フィルム交換。14:00雷雨となったため、調査切り上げ。
 今回は調査時間が短かったが夏の終わりの花々に集まる多くのヒョウモン類を見ることができたのが一つの収穫でした。(サポーター前田)

シラネセンニュウ ゴイシシジミ サワギキョウ

林道入口から大峰林道の昆虫、植物を調査しながら南ケ谷湿地に向かった。8月に比べ、シラヤマギク、ヤマウド、シラネセンニュウなど白い花が多くなり、昆虫が少なくなった。それでもオニヤンマやミドリヒョウモンが何回も現れた。ツルニンジンは蕾が大きく膨らみ数日中に開花しそうであった。木の実では、ミヤマガマズミの赤い実が目立った。
 林道の交差点では、20m以内の狭い範囲内でミドリヒョウモンやオオウラギンスジヒョウモンがハンゴンソウ、キオン、ウドの花に5頭くらいずつとまり、その周囲をヒロヒラと何頭か飛びかっていた。また、昆虫や植物中心に調査していたので見落としはあるだろうが、林道上でテンの糞が次々と見つかり、少なくとも7個はあったが、どれも植物食であった。(サポーター竹村)


ホンドテンモニタリング

 9月赤谷の日の前に相当雨が降ったようで、各ルートともコンディションが悪く、結果的にはムタコ林道の2サンプルのみとなりました。食植物の結実状況ですが、各林道とも概ねサルナシ、ヤマブドウ、ツルウメモドキ、ガマズミ、ミヤマガマズミ等の結実が認められました。
 一方、大峰林道を歩いた方からの報告で、林道に7つのテン糞があったと聞いています。他の場所と同様に雨が降ったと思われる、大峰林道になぜ7つものテン糞があったのか?興味深い記録です。地形的に雨の影響が少ない場所であった可能性が考えられます。後日、7つのテン糞のうちの1つを写真のみで確認したところ、ムクノキの果実ではないか?とのことでした。
 サンプル数は、ムタコ林道でテン2つ(食性:サルナシ)、雨見林道0、小出俣林道0、赤谷林道0、いきもの村0、と低調な結果となりました。雨見林道は、調査開始地点から600メートル付近を調査している時点で、豪雨と雷に遭い、勇気ある撤退を余儀なくされました。(サポーター鈴木)

テンモニ隊で記念撮影(赤谷林道) シロヨメナ サンショウウオの幼生

1日目のムタコ

 テンモニ隊として、9月は6日・7日とも主目的の収穫が少なく、私はもっぱらムタコや赤谷の林道沿いの植生(テンの食植物を含む)を見て回りました。
(1)ムタコ林道の橋の前後は短いながらも、とても変化に富んだ植生であることを改めて確認できました。
まず橋の手前は、右側の杉植林を含む斜面と道を挟んだ河畔には、所々明るい場所にサルナシやツルウメモドキが見られ、ツルウメモドキはたくさんの実が結実してました。(秋が楽しみです)ここには、ミズナラやトチノキ、イタヤカエデなどの目立つ実をつける樹木がたくさんあります。
(2)橋を過ぎた右手は、やや堆積物のある平坦な土地に植栽されたケヤマハンノキが優先していますが、林床にはサワグルミの幼樹やアカソ等の草本類も結構見られる明るい場所です。左手は、崩壊地の北斜面に、テンの食植物であるサルナシをはじめ、リョウブ・ヌルデ・ミズキなどの陽樹がこぞって生えています。(サルナシにとってはこの様な状況下では結実状況は悪いようです)
 いずれも、森の遷移(かく乱含む)が結構なスピードで進んでいる可能性があり、さらにネズミが食べる果実も多く、その豊凶も絡みテンの生息状況の年変化とも関わりがあるのかもしれません。どれか1つに特定できない複雑な要素があると思われるのですが。。。今後もテンモニと森の変化に注目すべき場所かと思います。皆さんもムタコを訪れたら、森の変化や状況を何でも観察されて教えていただけると、助かります。

ムタコ林道に現れたヤマドリ(?)↓

ムタコ林道に現れたヤマドリ?

2日目の赤谷

 テンの食植物を中心に、センターに作って頂いた新しい地図に種名と場所をプロットしていきました。まだ完成ではないですが、機会のある毎に追加して仕上げていけたら良いです。
 概観すると、赤谷林道はルートも長く、標高も徐々に上がり、なおかつ北側(新潟側)に近づいていくので歩くごとに樹木を含む自然の変化が楽しめます。また崩壊地が多いので、ほぼルート全域にわたってクマイチゴなどのイチゴ類やサルナシ・ツルウメモドキが見られます。
 前半は、川古温泉から1kmほど行った辺りからとくに沢に下りる向って左側斜面は成熟したモミ・ブナの混生した森が見られ林床にも特有の草本類が見られるようです。また右側の杉林も今まであまり気付かなかったのですが、所々明るい場所がありそこにサルナシなどがありそうでした。後半は、おおよそ川古温泉から2.5kmほど行った辺りよりオオバクロモジやマルバマンサクなど日本海側要素の植物が目立つようになります。さらに行ったつづら折りの場所は8月レポートで報告したように、明るい二次林で林床から高木層まで種の多様性が最も多い場所で、テンの食植物も多く、テンもこの様な場所も必ず利用していると思いますが如何でしょうか?(サポーター平井)


木の実豊凶調査

 トラップサイトが増えたために、1日で全サイトを回りきれなくなっていたので、2グループ制にして回収とカウントをなんとか1日で終るようにしました。翌日には別な活動ができ、月に1回の赤谷の日を充実させることができます。今回翌日は、冬に焼く炭材の用意をしました。相変わらずコナラ、ミズナラは収穫できていますがブナ、イヌブナはトラップに入りません。双眼鏡での確認でもほとんど認めることができないでいます。

森の中のシードトラップ 回収したサンプルをファーブルフォトで観察 トラップの中にいたエゴツルクビオトシブミ

9月の回収物(未熟、シイナ、虫害全て)

ブナ(低標高6本)1、ブナ(高標高4本)0、イヌブナ(5本)0、コナラ(5本)100、ミズナラ(5本)14、クリ(3本)0、トチノキ(1本)5、オニグルミ(1本)14


ハイイロチョッキリの卵

 この時期、赤谷の森では、コナラやミズナラの枝先が数枚の葉と未熟のドングリをつけた状態で地面に落ちているのを、良く目にします。今回、回収したトラップの中身にも幾つも入っていました。これはどうやら、ハイイロチョッキリの仕業らしいということで、NIKONファーブルフォトを利用して観察してみました。
 殻斗を良く見ると、傷(へこみ)があるのがわかります。ところが、殻斗を外してどんぐりを見ると穴がいています。これをうまく削ってみると、宝石のような卵が観察できました。周到に、空けた穴にフタまでするハイイロチョッキリの仕事にみんなで感心しきりでした。次は、実際に枝先を切り落とす様子を見てみたいと思います。(NACS-J出島)

ハイイロチョッキリに落とされたコナラの枝先 ハイイロチョッキリに穴をあけられたコナラの殻斗 ハイイロチョッキリに穴をあけられたコナラのドングリ コナラの中のハイイロチョッキリの卵

いきもの村環境整備

***作成中***




写真/文:鈴木誠樹、平井希一、前田修、竹村秀雄、出島誠一

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