2007年4月赤谷の日レポート

4月赤谷の日レポート(2007年4月7−8日)

 暖冬が続き、すっかり春になったかと思いましたが、3月末から何度も寒気の入るというおかしな気候です。暖冬とはいえ、木々の芽吹きにはまだ早く、その部分は例年通りという印象です。

クジャクチョウ テングチョウ

↑左:クジャクチョウ、右:エルタテハ (撮影:青木邦夫)



ホンドテン・モニタリング

ムタコ林道(4月7日)

雪はまったくない赤谷林道

 赤谷の日集合時間前に青木さんと鈴木の2名で、通常ルート(旧林道と新林道の交差地点から430メートル地点のスギ林まで)を調査しました。調査結果は、3サンプルで、テン2、イタチ1でした。テンのサンプルは、古いものらしく毛のみの採取となりました。イタチのサンプルは、比較的新しいものでした。
 今年に入って以降、このルートでのテンのサンプル数は以下の通り非常に少なくなっています。1月:0、2月:0、3月:2、4月:2、テンはどこで活動しているのか、ムタコ林道の始点から終点まで詳細に調査する必要があると感じています。(サポーター鈴木)

赤谷林道(4月7日)

 テンモニ隊には6名参加したが、和田さん、早岡さん、竹村の3名は初心者のため、1チームで赤谷林道をバリケードまでを往復した。鈴木さん、青木さん、金井さんのベテランの指導の下、初心者3名が各作業を分担した。林道を半分以上行ってもサンプルが見つからず不安になったが、九十九折からバリケードまでの間で幸い何箇所も見つかり、合計22サンプル(イタチ2含む)収集できた。バリケード横では地中に差し込まれたドライバーの赤い柄が気になったらしく、タメ糞があり、中からネズミの下顎がでた。入り口からバリケードの間には雪は全く見当たらなかったが、ダンコウバイ以外の花はなく、夜中の寒さの厳しさを感じさせた。
 帰りに九十九折近くの道路下側の尾根をクマが駆け下りるのが見えた。その直後、同じ場所にカモシカが現れ、すぐに姿を消した。(サポーター竹村)

合瀬(4月8日)

雪はまったくない赤谷林道

 サンプル数15(イタチ2含む)。ほとんど動物食で、毛や骨がよく見えていました。すでに雪はすっかり消えており、テンモニには好都合。木々の芽吹きはまだこれからですが、道端にはスミレが花をつけはじめ、キクザキイチゲも数輪、花をのぞかせていました。メンバーが3名なので、道の山側・真ん中・谷側と分担。ベテランの鈴木さんから「分かれ道には多い」とアドバイスをうけると、すぐに分かれ道でテン糞発見。「キツネの糞の上にのっていることもある」との話を聞くと、すぐあとにその見事な事例を発見。「趣味悪いね」などと冗談を言いながらのサンプリングでした。初めて参加の森林官・藤代さんがいちばん多く見つけてくれました。帰り道にもたくさん発見してくれ、その目のよさに感激でした!!
 テン糞は道の谷側で多くみつかり、山側ではキツネの糞が多く見られるように感じられました。好みはあるのでしょうか、たまたまなのでしょうか。このコースを以前数回歩いたときにはほんの数サンプルしか見つからず、今回もあまり期待していませんでしたが、今回はそれなりの数のサンプルを採集できました。「夏には少ないようだ」と鈴木さんからうかがいました。ここはコースの入り口付近に養鶏場があり、放し飼い状態の犬もいるらしく、犬の糞がたくさん見つかりました。歩くときには要注意です。テンには犬の影響などはないのでしょうか?心配です。(サポーター和田)

川古温泉上空のクマタカ

小出俣林道(4月8日)

 青木さん、小鮒さん、竹村の3名が担当した。川古温泉手前の駐車場に着くと中村さん、出島さん、早岡さんが上空を旋回しているクマタカを見ていた。
 前日炭窯班が2t車で入ったので心配しながらのスタートだったが、不安的中で東電の貯水池までいってようやくイタチの糞1個が見つかっただけ。自然林再生試験地の切り株や倒木もくまなく見て回ったが全く見つからなかった。杉林を過ぎた沢側崩落地の上部でようやくまとまったサンプルが見つかり、ホッとした。2次林の中のヌタ場横でウサギの毛らしきものが大量に見つかり、そこに狐とテンの糞があった。カツラまで行って戻ったが、目標のテン(10)をようやく上回る12サンプル収集できた。
時間があったので大桂付近の渓畔林を少し歩いたが、花の時期には早すぎた。特記事項としては、林道のあちこちでヒオドシチョウが2〜3頭飛び回っており、特に大桂の周辺では5頭以上いた。また自然林再生試験地でクジャクチョウが1頭。どちらも成虫で冬を越すが、大分早い出現ではないだろうか。(サポーター竹村)


小出俣で見つけたホンドテン4月26日撮影↓

ホンドテン

いきもの村(4月8日)

 茅野さんと鈴木の2名で調査しました。調査結果は、10サンプルで、テン2、イタチ8でした。サンプル採取箇所は、県道と県道上部(いきもの村の東側)でした。アトリエでイタチ3、旧県道でイタチ1、テン2、県道でイタチ3(溜糞)でした。
県道から下部(いきもの村西側)でのサンプル採取はありませんでした。こちらでは、鉄塔の基礎部分でテン糞を採取した経験がありますが、最近ここでのサンプル採取は少ないようです。(サポーター鈴木)



炭窯隊

4月7日(土) 薄曇り

今月の初日は、今年の暮れに焼く予定の、炭材の準備をしました。小出俣林道沿いの、人工林を自然林に戻す試験地に、伐採された雑木(広葉樹)が、たくさん残っています。これを炭にしようと言うことになり、運び出すことにしました。みんなで2tトラック山盛りに炭材を集めることができました。大成果です。これで今度の冬も暖かいでしょう。ついでに木材腐朽の観察学習用に、カラマツやホオノキの太い丸太も集めてきました。

炭材の長さを揃えるために、90cmの棒を用意します。 炭材の長さを揃えるために、90cmの棒を用意します。 棒に合わせて材を切ります。 広い伐採地から炭材を集めるのは、結構大変な作業です。

↑左と中左:炭材の長さを揃えるために、90cmの棒を用意します。 中右:90cmの棒に合わせて材を切ります。 右:広い伐採地から炭材を集めるのは、結構大変な作業です。

↓左と中左:切った材を2tトラックに積んでいきます。 中右:倉庫に積み上げ、半年間乾燥させます。 右:木材腐朽を観察学習するための丸太。

切った材を2tトラックに積んでいきます。 午後にはトラック一杯になった炭材。 倉庫に積み上げ、半年間乾燥させます。 木材腐朽を観察学習するための丸太。

4月8日(日) 晴れ

二日目は、ミニ炭俵制作の道具や材料作りをしました。俵を作るための道具は、地元の林元保さんから、以前プレゼントされています。名前が分からないので、俵作り用「馬」と呼ぶことにします。これを見本に同じものを3台作りました。これで、皆で夜なべ仕事がいつでもできそうです。わら縄作りは、サポーターの金井さんが先生です。わらを湿らせてから叩き、柔らかくしたものを用意します。先生の手元を見ながら、皆で真似をしますが、縄ができるのは先生だけ、生徒は手をこするだけで、縄ができません。何故でしょう?

林元保さんプレゼントの俵作り用「馬」。これのコピーをします。 稲わら叩き。わらを柔らかくします。 先生はサポーター金井さん 生徒たちは苦笑い

今月で、炭焼き関連の作業は一旦終えます。次回は11月に炭材の窯入れを行い、12月には窯に火を入れる予定です。炭焼き隊参加の皆さまお疲れさまでした。なお、次回からは、夏場の作業として、木の実の豊凶調査が始まります。(サポーター川端)


いきもの村 ネイチャートレイル

「いきもの村」を赤谷プロジェクトの様々な活動の拠点として活用していますが、この場を環境教育フィールドとしても設定・管理していくことも重要な課題です。4月の年度初めということもあって、私は2日目のまる1日、今年「いきもの村」を教育フィールドとして管理していくために、どんな活動を組んでいけばよいか、思案していました。私の方では、こんな案を考えています。

■ネイチャートレイルの整備

1)下段の鉄塔から、西のコナラ林の階段に通ずるエリアには、ササが出ていますが、人1人通れるくらいの笹刈りをしてはどうでしょうか。このコナラ林には、伐根や枯死木等の素材が豊富です。具体的には、鉄塔から真西に向かい、「A262」テープのついている豊凶調査対象木のクリを目印に直角に曲がり、ササのない林から階段へ通ずる道として設定することを考えます。

左:西側コナラ林への階段  右:西側コナラ林とササ↓

西側コナラ林のササ 西側コナラ林の階段

2)最下段の道が、ススキやクズによって、道が明瞭でなくなってきました。定期的に草刈りをして、道を明瞭にしておきましょう。また、ニセアカシアがはびこっているエリアを歩くようになっているので、一部ルートを変更したいと考えます。

3)下段の2段目から、1段目(観察テラスの段)へのルートを一部変更します。当初は、チョウセンゴヨウの植わっている斜面を下り上る形でルート設定していましたが、2段目の終わり地点から、即1段目に上り、そのまま観察テラスまで向かうように自然の道ができています。チョウセンゴヨウからハルニレまで、初夏の時期はニホンカモシカの通勤路になるようなので、この方がよいと考えます。ついては、2段目から1段目にあがる部分に2箇所、小さな階段をつくりましょう。

4)階段が全体的に痛んでいます。作成からそろそろ3年になるので、補修しましょう。


■環境管理

(1)ニセアカシアの除去
 ニセアカシアを一生懸命伐採したのが、2004年12月〜2005年4月。伐採した材は炭材に活用しましたが、またはびこってきました。伐根からの萌芽で、ちょうど人の目線に棘が出ていて危険です。目についたものはできるだけ鋸で切りましたが、ニセアカシアの除去作業を、定期メニューに組み込みます。
なお、『森林技術』誌の2007年4月号の特集「ニセアカシア」によれば、ニセアカシアの根絶は難しいものの、年間3回の刈り払いを、3年以上継続すれば、萌芽再生をかなりの程度低減できるようです。ということで、地道ですが、何度もしつこく刈り払っていくしかないようです。

いきもの村に生えるススキ↓

いきもの村に生えるススキ (2)ススキ刈り?
 林元保さんが、「ススキは刈らないと、"使いで"のある"いいススキ"が出てこないですよ、もったいないです」と仰っています。


■調べごと

(1)センサーカメラの常駐ポイント
この4点のセンサーカメラは、通年でかけておきましょう
1)下の水場  2)下段・ハルニレの下  3)上段・モミの木周辺  4)上段・東南奥

(2)未調査エリア
上段のアトリエ直下から西のスペースについては、まだどんな生物が利用しているか、わかっていません。散策しただけでも、アナグマの穴らしきもの、クマ・カモシカの糞、イノシシが葛の根を掘り起こした痕跡等がありました。手はじめに、四季を通じて、センサーカメラを設置して、基本的な生物リストを作成しましょう。


■おおまかなゾーニングのアイデア

 苗畑から放置され20年が経過し、上段(東)と下段(西)とで、環境の成立史やその進み方が微妙に異なることがわかります。全体を俯瞰すると、仏岩エリアの森林の影響を受け、東から西へ向かって徐々に森林(二次林)が進出してきていることが読みとれます。このため、上段は森に戻るスピードがいくらか速く、下段は人の利用の影響を、今もかなり色濃く受けているようです。
 このことから、モニタリングサイト&環境教育フィールドとして見た場合、上段は徐々に森に戻る過程を観察するエリア、下段は人による里地的利用の過程を観察するエリアとしてはどうかと、アイデアが浮かびました。
 このアイデアを実行に移すとすれば、環境管理の方針によって教育素材の配置も変わってきます。たとえば、環境教育素材の配置を考えるとするならば、腐朽材観察は上段で、萌芽観察は下段で、と、なるかもしれません。


 ということで、4年目の「いきもの村」も、いろいろ課題がありました。やる ことは山積しているようにも思いますが、「いきもの村」を研修拠点としてもう まく利用し、赤谷プロジェクトの仲間たちが手づくりでつくる拠点としての機能 を高めていきましょう。(NACS-J茅野)

防火水槽の生き物

 一昨年(2005年)の12月に完成した防火水槽。丸1年以上経過して落ち葉や土が自然に入り込み、昨年の夏ごろからヤマアカガエルやツチガエルが利用するのが観察されるようになりました。春になり水に触るのも楽しく感じられるようになりましたので、現在、どんないきものが利用しているのかのぞいてみることにしました。

マツモムシとコカゲロウの仲間 サワガニ ヤマアカガエル

↑左:マツモムシとコカゲロウの仲間 中:サワガニ 右:ヤマアカガエル

 防火水槽には、上の水場から常に水が流れて込んで排水されているので、流れ込みと排水口がある南半分はかなり流水環境になっています。反対に森との連絡路になっているU字溝部分はほとんど水が動くことはなく、止水の環境になっていると思います。今回、流水環境で採集できたのは、マツモムシとコカゲロウの仲間、だけでした。U字溝部分で採集及び観察できたのは、マツモムシとコカゲロウの仲間に加えて、ヤマアカガエル、ツチガエル、サワガニ、ムラサキトビケラ、トビケラの仲間、でした。ツチガエルとヤマアカガエルは越冬場所としてこの止水部を使っていたようです。

ムラサキトビケラ ムラサキトビケラ ムラサキトビケラの筒巣

↑ムラサキトビケラの幼虫 左:筒巣に入っている様子 中:筒巣から出た状態 右:筒巣

 ムラサキトビケラは現場では種名がわからなかったので、知り合いの野崎隆夫さんに画像で確認して頂きました。「頂いた画像のトビケラはムラサキトビケラの幼虫です。日本で最大、かつ世界でも最大級のトビケラです。筒巣から抜け出しても、そばにおいてやるとすぐに入ります。強烈な肉食性で、この種がいることは餌になる水生昆虫も多い豊かな環境といえるでしょう」とコメントを頂きました。たしかに、筒巣をそばに置くとすぐに入っていくのを観察できましたね。ちなみに群馬県絶滅危惧U類です。
 今回、期待していたヤゴを見つけることはできませんでした。やはり、抽水植物のような産卵場所をつくることが必要だと思われます。夏ごろからビオトープとしての整備を始めたいと思っています。(NACS-J出島)


 次回は5月、新緑で赤谷の森が最も心地よい季節です。よろしくお願いします。(NACS-J出島)


写真/文:青木邦夫、川端自人、鈴木誠樹、和田晴美、竹村秀雄、茅野恒秀、出島誠一

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