2006年7月赤谷の日レポート

7月赤谷の日レポート(2006年7月1−2日)

梅雨空の赤谷の日となりました。ただ、活動時間に強い雨が降ることはなく、スケジュールどおりの活動ができました。

※両日とも梅雨空の中での活動だっため、画像が少なめです。
ヤマビル キイロスズメバチの巣 コムラサキ

↑左:ヤマビル(ジメジメして気温の高いこの2日間、とても元気に動いていました)  中:キイロスズメバチの巣(作り始めはこんな形なのですね)  右:コムラサキ♀(赤谷の日の翌週7/7のいきもの村)



豊凶調査

 今回は前回6月の赤谷の日に仕掛けたトラップの状況確認と内容物の回収を行いました。
まず、ムタコ沢に向かい、「ヤマビルを回避して昼食を食べよう」という長浜さんのアドバイスに従い、センダイムシクイの声を聴きながら舗装道路上でランチを済ませ、いざ調査開始ですが・・・肝心のトラップが見つかりません。「確かにここのはずだけど…」あの目立つトラップが見つからないというのはとても不思議です。「!!前回...ここ仕掛けたっけ?」ここで重要な事実に気づきました。先月は完成したトラップを約10ヶ所に設置しましたが、よくよく考えてみると、そもそもムタゴ沢に仕掛けていなかったということに気づいたのです。。。
トラップの中身を回収 森の中に設置したトラップは結構目立ちます 回収物を仕分け中
 「ムタコ沢には美味しいランチを食べに来たんだ」などと言い訳にならない言い訳を共有して川古温泉に向かいました。川古温泉周辺ではリストと照らし合わせながら合計で7ヶ所のトラップを巡回し、内容物を回収しました。途中、左足の脛にかすかな痛みを感じたので長靴を脱いでみるとやられていました。私のヤマビルによる被吸血初体験です。その後も長浜さん、瀧澤さんが相次いで吸血され、私も未然に除去することができたものの3回ほど長靴に入られました。噂には聞いていましたが、この時期は本当にヤマビルが多く活動的です。
 いきもの村に戻り、3ヶ所のトラップで回収作業を行い、村の家に戻って回収した内容物の整理を行いました。この時期は豊凶を把握する時期ではありませんので参考程度の結果ですが、トラップに入った花と、前年の実と思われるものを分別して保存しました。(サポーター高野)



初回講習会

 赤谷の日に初めて参加して頂く方には、「初回講習会」として、AKAYAプロジェクトの紹介や、いきもの村全体の案内をしたり、センサーカメラの設置と回収、ホンドテンのフンのサンプリングなどのフィールドワークを体験してもらう機会を設定しています。今回も4名の方を対象に行いました。
アナグマの塒を観察しているセンサーカメラ 回収したカメラにはアナグマの親子が写っていました 初参加者も数名がヤマビルの洗礼を受けました。

↑左:アナグマの塒でセンサーカメラを回収&設置  中:回収したセンサーカメラには子どもを連れたアナグマが写っていました!  右:初参加者も数名はヤマビルの洗礼を受けました。。。

午前中は、AKAYAプロジェクトの内容や、いきもの村の施設を紹介しました。午後は、いきもの村全体を知ってもらうことと、テンモニ隊の活動を紹介するために、ネイチャートレイルを歩きながらホンドテンのフンを探します。その後、センサーカメラの設置と回収に、アナグマの塒へ。穴の中から一声だけ「グゥ」という声が聞こえましたが、残念ながら聞けたのは私だけでした。。。昼間も活動する彼らは、私たちがいなくなるのをずっと待っていたのかもしれません。センサーカメラの設置と回収を終えて、講習会を終了としました。
 ほぼ毎月、数名づつではありますが、「赤谷の日に参加したい」と新たに参加される方がいらっしゃいます。”赤谷の森”と”いきもの村”を紹介する最初の機会として、今後も「初回講習会」を丁寧に続けていきたいと思います。(NACS-J出島)


ホンドテン・モニタリング

 今月は2日間で、ムタコ・合瀬・小出俣・いきもの村の4ルートを調査いたしました。結果的には、7月1日ムタコ16サンプル(テン12 キツネ4)、合瀬2サンプル(テン2)、1サンプル(キツネ1)。7月2日ムタコ0サンプル、小出俣0サンプル、いきもの村(テン1 イタチ1)。フンの内容物については、まだ圧倒的に動物食の傾向が強いですが、幾つか果実を食べたとみられるサンプルも出てきました。
サンプリング中 サンプリング中
 初日にムタコルートを調査しての感想ですが、雨をしのげる場所では状態の良いサンプルをみつけることが出来ますが、それ以外の場所ではほとんど発見することが出来ませんでしたので、雨の影響をかなり受けていると思われます。(サポーター青木)


猛禽類調査研修会

赤谷の森にはイヌワシ、クマタカを始め、多くの猛禽類が生息しています。
赤谷プロジェクトのシンボルでもある猛禽類の調査活動に参加したいと思うサポーターを対象に、第一回目の猛禽類調査研修会が行われました。


赤谷の森における猛禽類調査の歴史 赤谷の森の猛禽類の生息状況を解説

1日目 安田さんと横山さんによる講習会

 一日目の夜、たくみ小屋にて安田さんと横山さんによる講習会が行われました。
まず始めに、これまでの赤谷における猛禽類調査の歴史について。これは同時に赤谷プロジェクト創設への歴史でもあります。時代の流れで、森(地元の多くの方は、山といいます。私はこの表現も大好きです。)と人との付き合い方が、大きく変わった1980年代。そんな時代に、どうにか健全な森の姿を残したいと願った地元の方達の活動が、猛禽類調査を支え、引いては赤谷プロジェクトの呼び水になったのだと、改めて実感しました。


次に、猛禽類調査の意義について。赤谷プロジェクトの大きな目標の一つは、生物多様性の復元です。生物多様性とは単に種数が豊富ということではなく、いかに生物同士の繋がりが沢山あるかということです。そしてその繋がりが沢山ある場所でしか、イヌワシやクマタカといった希少猛禽類は生息できません。また、その繋がりというのは人間のみの目を通して見るのはとても難しいことなのです。人間の目を通してだけでは分からないから、動物の目を通して森を見る、これはテンモニ隊の活動も同じことです。猛禽類は森の多様性を示す指標になる種であり、それを観察することで、赤谷の森がどのように変化していくのか見ることができるという説明に、単に希少だから守るというのではないと納得。その後、具体的な調査手法の説明を受けて、初日の講習会は終了となりました。


2日目 実際の調査

 二日目はいきもの村周辺で、3班に分かれ、今年生まれた2羽の若ノスリとその両親の行動を調査しました。
始めは使い慣れないプロミナ(望遠鏡)で、留まっているカラスを視界に捕らえるのだけでも一苦労。一旦視界に捕らえても、ちょっと目を離すとすぐにどこに行ったのか分からなくなってしまいます。それでも若ノスリがまだそれほど飛べなかったこと、盛んに鳴いてくれたことが助けになって、何とか観察記録を付けることができました。ノスリはもともと猛禽類の中でも、目が真っ黒でかなりかわいい顔をしているのですが、若鳥になると頭がまるで野球部の中学生みたいで、さらに愛くるしく見えます。途中何度か親鳥が上空を旋回している姿も確認しました。ただし肉眼で・・・
フィールドスコープを使って観察 2羽の若ノスリの個体識別情報をメモ きりり(いきもの村の若ノスリ)

↑(左)フィールドスコープを使って観察  (中)目黒さんのフィールドノートより  (右)後日、イラストレーターの”みさこ”さんより届いたイラスト(クリックで拡大します)

約3時間の観察で、二羽の若ノスリの識別情報を収穫。1羽は腹の模様がしっかりしているので「きりり」、もう1羽は胸の模様がギザギザしているので、「フーミン」と名付けました。また、親が上空を旋回して若ノスリのいる森の周辺に消えた後、若ノスリのソノウ(リスで言う頬袋みたいなもの)がふくらんでいたことも確認。親が盛んにえさを運んでいるのだろうと予想できました。たった3時間の調査でしたが、ノスリの気持ちが少し理解できるようになった気がして、よし!今後も頑張るぞ〜と気合いがはいります。
 実際の調査では、発見、時間のチェック、行動の記録、他のメンバーへの情報提供等々を、一人で出来るようにならなければいけません。今後も修行を積む必要がありそうです。目指せ一人前ASTR(Akaya Special Team for Rapters)!!(サポーター目黒)




 この他、いきもの村のネイチャートレイル整備(草刈)も行いました。
 さて、来月(8月)は、テンモニ隊は足立先生を迎え、沢の中でのサンプリングを行う予定です。豊凶調査も秋に向けて、設置作業が必要ですね。暑い日になると思いますが、来月もよろしくお願いします!



写真/文:青木邦夫、高野丈、茅野恒秀、出島誠一、目黒美紗子

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