2006年5月赤谷の日レポート

5月赤谷の日レポート(2006年5月4−7日)

いきもの村周辺の雪はすっかなくなりました。5月赤谷の日は、体を動かすのに気持ちがよい、フィールドワーク日和となりました。炭焼き、テンモニタリング、鳥類観察、コウモリ観察、センサーカメラ設置などを行いました。

炭釜と師匠 炭は灰にならずに残っていました
スギ材でも立派な炭

↑(左)たくみ小屋、(右上)ヤエザクラに止まるヒオドシチョウ、(右下)いきもの村で順調に子育てをすすめるノスリ



サポーター初回講習会

 初日(4日)には、初参加(6名)の方向けに、初回講習会を行いました。
まず、NACS-J茅野さんからAKAYAプロジェクトに至るまでの赤谷の森の歴史や、AKAYAプロジェクトの趣旨について説明をしました。

プロジェクトエリアを説明 いきもの村内を案内

↑(左)天気が良いので青空教室風  (右)いきもの村内を散策

 午後は、サポーターの活動拠点であるいきもの村を歩きながら、場所の名前やサポーター活動の経緯などを説明しました。設置してあるセンサーカメラの回収や、途中で見つけたホンドテンと思われるフン(サンプル)のサンプリングを行い、サポーター活動の一部を体験して頂く機会も設けました。最後は観察台で子育て中のノスリを観察しました。※少し見えにくかったですね。。。
そして翌日からは、それぞれのサポーター活動に参加して頂きました。今後も初めて参加する方にはこのような機会を設けて行きたいと思います。(NACS-J出島)

ホンドテン・モニタリング

 5月の赤谷の日は晴天に恵まれました、絶好のテンモニ(ホンドテンモニタリング)日よりでした。テン糞隊改めテンモニ隊、2日間で延べ18人がモニタリング調査へと出かけました。今回は雪解けとともに現れたいわずもながのホンドテンの糞、たちのおかげで2日間で76ものサンプルを採集することができました。調査ルートは、雨見林道コースとムタコ沢コースの2本です。その他に保土野林道といきもの村で数個のサンプルも採集しましたが残念ながら、赤谷谷・小出俣沢・茂倉沢の各コースは先シーズンの豪雪の影響による道の荒廃で、モニタリングはしばらくできそうもありません。そのかわり2日間で雨見・ムタコを2回づつモニタリングすることにより完璧な採集を目指せます。

威嚇するニホンザル エイザンスミレ

↑左:雨見林道  右:ムタコ沢

 乾いた地面のおかげで、砂利の上のサンプルの発見は容易ですが、雪の影響か草の下に隠れた物、スギの葉にまぎれた物など注視しないと判別がむずかしいサンプルもありました。本来ならその時期に採集するべきものですが雪に隠されていたサンプルは、その内容物も様々で木の実の多い物、ウサギの毛が入ったもの、ネズミの毛に覆われたものなど餌内容の季節変化はわかりにくそうです。2日目の調査終了後我々を落ち込ませたのは、初日の調査での見逃しの多さです。結局同じルートを歩いて調査したにもかかわらず、2ルートの合計で初日41、2日目29と多くの取り残しがありました。(いきもの村と保土野林道は含まれません)明るいニュースは、学生さんたちの参加です。今回は2つの学校から合計4人参加がありそのうち3人は、テンモニ初参加でした。終了後その内の1人から「思ったより楽しかった、糞の発見でやる気がでた」との感想をくれました。おじさんたちも、そうしてテンモニにはまっていったのです。テンモニ隊の皆さん2日間おつかれさまでした。(地域協議会:長浜)

ムタコ沢ルート

 初日は私を含め4名で調査。雪もなくなり、多くのサンプルに期待を弾ませ歩き出します。オオルリが鳴き、キクサキイチゲやエイザンスミレたちも、綺麗に咲いていました。サンプルは新しいものが少なく、雪が解けたことによって現れた古いものが中心でした。24サンプル採取出来ましたが、キツネが多く、また雨等に流され毛のみになってしまって、判別不明なものが今回は多かったように思います。ルート終盤に永井群と思われるニホンザル4頭に遭遇。よく見ると沢反対に20頭くらいの群れがあり、しばしニホンザル観察をしました。雪解けで増水していた沢を、木のしなりを上手く利用し渡っていく様子等も見ることが出来ました。

威嚇するニホンザル エイザンスミレ

↑左:ニホンザルの群れに遭遇  右:エイザンスミレ

テンモニ調査についてはサンプルを採取するだけでなく、周りの環境もみることが大事だと思っています。先述した野鳥や野草だけでなく、ショウジョウバカマの盗掘用と思われるロープの発見など、周りを見ることによって多くの発見がありますし、テンが食用とするのではないかと思われる実などもテンモニ隊として意識しなければいけないと思います。ただ取り残しが多いのは良いことではありませんので、周りを観察することとバランス良く調査を進めなければと考えさせられた5月の調査でした。(サポーター青木)

サンプル キクサキイチゲ クロサンショウウオの卵塊

↑左:採取したサンプル  中:キクサキイチゲ  右:クロサンショウウオの卵塊

炭焼き隊

 炭窯が、この3月に完成し、炭窯隊は解散した。そして今回からは、その窯で炭を焼くことになる。炭焼きの技術を究め、いつか、いきもの村で炭焼きをして、暮らして行けることを目指し、炭焼隊を結成した。これはその記録である。

2006年5月4日 10:00

 炭窯の前に、笛木師匠率いる、炭焼隊の面々が揃った。初めての本格的炭焼である。前回に、ブロックと粘土で閉じられた、窯の口を開ける。中には今回の炭材のニセアカシアがギッシリと詰まっている。窯の口の前に、着火用の薪や杉の葉を束ね点火した。杉の葉がハゼながら燃え上がり、煙が風に渦巻いた。空気の流れを良くするために、笛木師匠工夫の、波板による炎ガイドを、着火用薪に被せる。これで炭材に火が回るのを待つ。

ふたをしていた窯を開ける 着火用の材を準備 炭材に火が回るのを待つ

↑左:ふたをしていた窯を開ける  中:着火用の材を準備  右:炭材に火が回るのを待つ

2006年5月4日 14:00

煙突からの煙 ブロックで蓋

 煙突から力強く、白い煙が出るようになった。確かに炭材にも火が回ったようだ。煙に手をかざすと、熱気とともに、強い湿気を感じる。
 これから忙しくなる。前もって、粘土を大量に練って柔らかくしておく。少し水分が多いほうが良い。窯の口の着火用薪の燃えかすを取り除き、下に水を撒き、冷やす。そこに粘土を盛る。ブロックを置く。その上に粘土、さらにブロックと、手早く積み重ね、口を閉じていく。小さくなった口から、吹き出る空気は、炎が混ざり強烈に熱い。一番下の、空気取り入れ口を除いて、粘土の壁ができたら、隙間、ひび割れに水で溶いた粘土を流し込み、密閉度を高める。この間、煙が風で渦巻いていて、全員、燻製になってしまった。


2006年5月4日 17:00

煙突の口も小さく 空気の取り入れ口

 煙突からは、相変わらず真っ白い煙が、川の流れのように、止めどなく吹き出てくる。そろそろ、燃焼する速度を、遅くしなければならない。空気取り入れ口を、半分以下に狭める頃だ。同時に煙突の口も、1/3に小さくする。

笛木師匠が、その両方の口のサイズを見て確認した。「よし、こんなもんだ。粘土の壁のひび割れには、マメに粘土を流し込むように。」
これで明日まる1日、燃やし続けるのだ。


2006年5月5日 8:00

 煙突から出る煙の、白さが少し薄くなった。向こう側が気持ち、透けて見えるようになった。手をかざすと瞬間にベトっとして、まだまだ湿気が多い。状況を師匠に連絡すると、「夕方には確認をしにくる」とのこと。


2006年5月5日 16:00

 煙の色が、大分透明になってきたような気がする、がまだ湿気は強い。師匠が来て煙を見る。どうも燃焼が早いようだ。「明日の朝の5時頃には、煙が青くなってくるかもしれない」。そして口の蓋の粘土を見て、「このひび割れに、溶いた粘土を流し込まないと、ここから空気が入る」との叱責。まずい、別のことをしていて忘れていた。急いでトロ粘土を流し込む。

煙を見極める笛木師匠 穴をふさぐための粘土をつくる一番弟子 穴をふさぐ一番弟子

↑左:煙を見極める笛木師匠  中と右:粘土をつくり穴をふさぐ一番弟子

2006年5月6日 5:00

窯の口の壁 煙は見えない

 煙突の煙は、青く透明で、ほとんど見えなくなっていた。だが、手をかざすと、まだ湿気は確かにある。煙が青くなったら、空気取り入れ口を、一旦大きく開け、炭を一気に焼く、と言われている。そのタイミングが分からない。
 炭材は、窯の中で、上の方から炭になると言う。そのとき煙が徐々に透明で、青みがかかってくるのだそうだ。全てが炭になれば、湿気が無くなり、煙は透明になる。全てが炭になった時に、材の中の余計なガスを追い出すために、口を大きくするのだ。

2006年5月6日 7:30

煙に湿気が無くなると、マッチをかざすだけで火がつくと言う。まだつかないが、煙はほとんど見えない。と師匠に連絡をする。それじゃあ、そろそろ口を開けろ、との指示。取り入れ口、煙突ともに全開にした。そこに師匠が到着。気付くと煙突は、煙の量が増えていた。つまり、再度目に見える煙が上がっているのだ。窯の口から中を覗くと、赤い炎が揺らめいている。余分のガスが燃えている。
 煙突にマッチをかざすと20秒程で着火、それが10秒となり、5秒となり、4秒となるのに時間はかからなかった。そこで窯の口を、粘土で完全に閉じた。「30分したら煙突口も閉じるように」、と言い置き、師匠は「仕事がある」と言って帰ってしまった。この時期、農作業が忙しい。

窯の底の炎 全開の煙突 マッチに点火

↑左:窯の底の炎  中:全開の煙突  右:マッチに点火

2006年5月6日 8:30

炭焼隊最後の仕事。煙突を外し、その口に石を置き、粘土で密閉する。窯の中に、高温の炭を閉じ込めたまま、空気を絶った。後は、炭の神様からの、お恵みを待つだけだ。

煙突を倒し、石を置 粘土を盛る その上に土を盛って完了

3日間、炭窯のお守りをした、炭焼隊同志の皆さま、お疲れさまでした。笛木師匠、林師匠ありがとうございました。6月の赤谷の日に、お恵みを頂戴します。(サポーター:川端)

いきもの村鳥類観察

GWの渋滞を抜けて旧新治村に入ると桜が咲き、新緑が芽吹いていました。私の住んでいる三鷹では既に葉が茂りきり、新緑というよりも深緑とでも言うべき濃い緑になっていますから、ちょうど季節を一ヶ月遡ったような感覚でした。季節は春、車窓からはツバメやイワツバメ、アマツバメが飛びまわっているのが目に入ります。春を迎えて大きく変化している赤谷の鳥類相を調べるのが楽しみになってきました。
早朝観察会で耳を澄ませる 朝日を浴びながら鳥を観察6:00頃
 いきもの村に着くとキビタキやオオルリのさえずりが目立ち、夏鳥の到着を象徴していました。初日はテンモニタリングに参加し、林道を歩きながら鳥類相を記録しました。傾向としてオオルリの個体数の多さが顕著で、これは私の地元(井の頭公園)での観察記録と同じ傾向にありました。またオオルリの鳴き方が他の地域と異なることに気がつきました。個体差があるものの、短くワンフレーズ鳴いて終わる鳴き方が特徴的で、複数の個体で同様の傾向を確認しました。この点について鈴木さんが同様の感想を述べられ、コマドリの声を聴かないという疑問点でも一致しました。今後も注目していきたいと思います。
 2日目は早朝にいきもの村での鳥類相予備調査を実施しましたが、なぜか調査の時間帯に鳥の姿と鳴き声が乏しく、観察できた種は少なかったですが、観られた種と聴こえた種に関しては解説をさせていただきました。2日間を通じて観察できた種は49種。種数もさることながら、かなり密度が濃い印象がありました。以下に観察種を示します。(サポーター高野)
カワウ/アオサギ/トビ/オオタカ/ハイタカ sp./ノスリ/サシバ/クマタカ/チョウゲンボウ/ヤマドリ/キジ/キジバト/ジュウイチ/ツツドリ/アマツバメ/アオゲラ/アカゲラ/コゲラ/ツバメ/イワツバメ/キセキレイ/ハクセキレイ/セグロセキレイ/サンショウクイ/ヒヨドリ/ミソサザイ/トラツグミ/クロツグミ/アカハラ/ツグミ/ヤブサメ/ウグイス/エゾムシクイ/センダイムシクイ/キビタキ/オオルリ/エナガ/コガラ/ヒガラ/ヤマガラ/シジュウカラ/ゴジュウカラ/メジロ/ホオジロ/カワラヒワ/イカル/カケス/ハシボソガラス/ハシブトガラス

センサーカメラ設置

 2日目、小出俣のアナグマの塒へセンサーカメラを設置しに行きました。前回は雪の中で、アナグマの痕跡も見えやすかったのですが、雪はすっかりなくなってしまいました。雪の上には開いていなかった穴が他に幾つもあることがわかり、それぞれの穴の状況を良く見ると、最近使用しているかどうか読み取ることができました。ただ、すべての穴は中での繋がっているのかもしれません。一度探検してみたいものです。

ムササビ ムササビ観察 ムササビ観察

↑(左)アカマツの上で休むムササビ  (中と右)あまりにも真上なので寝転がって観察

 アナグマの塒にから戻る途中、アカマツの上でうずくまっているムササビを発見しました。目は開いているのですが、私たちが近寄っても、まったく動かないので、「死んでいるのか?」と話をしていました。死体であればぜひ持って帰りたいと思い、木に登ろうとすると、面倒そうに少しだけ動いてまた動かなくなりました。塒に帰りそびれて休んでいるのか?明るいと動けないのか?不思議な光景ですが、ムササビは日中必ず塒にいるわけではないのですね。面白い姿を観察できたと思います。(NACS-J出島)

コウモリ観察

地域協議会の松井さんから赤谷の日に先がけ「富士新田橋両端の外灯でコウモリが目視でき、バッドディデクター(以下、”B.D.”)でエコロケーションパルスが確認できる。」との情報を頂き、赤谷の日の夜の部としてコウモリ観察会を実施することにした。
 いきもの村から車に分乗して富士新田橋に向かい、9時30分〜10時30分まで観察会を行った。目的地は、富士新田橋であったが、ゴールデンウィークでもあり、すぐ近くの高原千葉村の外灯が点灯されていて周辺はかなり明るかった。高原千葉村の先に車を止め、5台のB.Dを各班に手渡すと、すぐにエコロケーションパルスが聞こえてきた。各班が勝手に周波数帯を変えて歩いていたため、様々な音が聞こえてきた。
バットディテクターを夜空に向けます バットディテクターを夜空に向けます バットディテクターを夜空に向けます
そこで、目的地の富士新田橋で5台のB.Dを全て同じ周波数に合わせ、どんな音が聞こえるか試してみた。20kHz:ボボボ、タッタタッタタンタンとかなり大きな音が聞こえたものの姿は見えなかった。25kHz:ブツブツブツと聞こえたが、姿は見えなかった。40kHZ:チチチチチと聞こえたが、姿は見えなかった。50kHz:ブツブツブツと聞こえ、姿を見ることが出来た。大きさは鳥のヒガラにコウモリの翼に付け替えた感じに見えた。モモジロコウモリかもしれない。60kHz:ブツブツブツと聞こえた。※(注)音の感じは、観察会隊長(鈴木)の主観によるものです。
 昨年8月からコウモリ調査をしているが未だにB.D.でとらえた音の主(コウモリの種)を特定することが出来ていない。これまでのコウモリ調査は、B.D.から聞こえる音の感じの講習会といったところか。それでも、今回は参加者全員がモモジロコウモリらしい姿を見ることが出来ただけでも1つの収穫ありとすべきか。今回は調査ではなく観察会としたことでお許し下さい。今後は、専門の方々のご指導を受け、調査としてデータの蓄積を図っていく方針です。B.D.もコウモリが何をしている時の音か?飛んでいときは周辺がどのような環境か?などにも注目していきます。(サポーター鈴木)


スーパーダックのお弁当↓

スーパーダックのお弁当

 夜のミーティングでは、AKAYAプロジェクト全体像について説明をしました。また、『AKAYAプロジェクト・サポーター登録制度要項』と申し込み用紙を配布しました。夜のミーティングでは、AKAYAプロジェクトの状況をみんなで共有する機会として機能してきたと思います。

 さて、来月は、炭を窯から出します。いよいよいきもの村産の炭第一号の誕生です。ノスリの子育てにも注目ですね。
※活動しやすい時期になりますが、一方で既に”ヤマビル”の出現も確認していますのでご注意を!



写真/文:赤谷センター、青木邦夫、小川祐二朗、川端自人、鈴木誠樹、高野丈、茅野恒秀、出島誠一、萩原正朗、長浜陽介、宮崎朋美

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