12月赤谷の日レポート

12月赤谷の日レポート(2005年12月3−4日)

いきもの村からの風景

↑「赤谷の日」の翌日(12/5)の朝、雪が一晩中降り続いたようですが、翌日は晴天、雪景色がとても奇麗です。一晩中炭を焼き続けた証拠に炭窯小屋の屋根だけに雪がありません。



いきもの村の冬じたく

 「赤谷の森」にも冬到来です。たくみ小屋に薪ストーブを設置し、厳寒の日の活動に備えます。半年ぶりに煙突をつけ、ストーブに火をいれました。夜は暖かく過ごすことができました。これから4月くらいまでは、このストーブのお世話になります。
 例年50cmを軽く超える積雪となるいきもの村では、ネイチャートレイルのルートがわからなくなることもあります。そこで背の高い竹を目印として置きました。今年もノウサギに出会えるでしょうか。(茅野)

炭焼き隊

炭窯周辺整備

 火入れを初めて行うにあたって、準備することがたくさんありました。万一に備えた危機管理の環境整備です。ひとつは、炭窯周辺のススキ・クズなどの草を刈り払うこと。周辺およそ10m〜15mの草を、鎌をつかって刈り払いま した。もうひとつは、再建した防火水槽の周りに、誤って転落しないように柵を設けること。ひさびさに鉈を手にして杭をつくります。赤谷センターの石坂さんの技術には恐れ入りました。(茅野) ススキやクズを刈ります 防火水槽の柵

火入れ作業

12月のAKAYAは、待ちに待った炭窯への火入れになりました。
(1日目) 集合後、念のため窯の口まわりの隙間を粘土で固め、窯口に薪と着火用のスギ枯れ葉を置きます。着火用の薪は、5月に相俣ダムで頂いてきた流木です。早速着火。時刻は11時30分。スギ枯れ葉はすぐにパチパチとハゼながら煙を出し、細い薪へと火が移っていきました。
着火の準備 着火 順調に燃えます
笛木先生は、薪をどんどんくべていきます。煙突からは煙がフワフワと出始めました。窯の口の空気の流れを良くし、熱気が窯の中に入っていくようにするために、トタンの波板をかぶせます。窯と炭材は、3カ月間置いてあったためか、火の付きが良いようです。新しい炭材の場合には、この薪による炭材への着火が大変だとか。お昼も過ぎた頃、笛木先生は火の具合を見て安心し、昼食に。残った炭窯班が、薪をくべながら、窯の前で弁当を食べていると、窯の口の石がバン!、バン!と大きな音を立てたはじけます。これには皆びっくり。おにぎりをくわえながら後ずさりしてしまいました。
火の様子をうかがう笛木師匠 トタンで熱を中に入りやすく 師匠と弟子達 はじけた石

↑左:火と煙の様子を読む笛木師匠、中左:トタンをつけます、中右:師匠の話に感心するばかりの弟子たち、右:われた石の破片

 弁当を食べ終わったころ、それまでフワフワ程度にしか出ていなかった、煙突の煙が、突然モクモクと真っ白に、吹き出し始めました。そこに見計らったように、笛木先生と林先生が登場。窯口の火の具合を確認すると、「もうよし、薪の火を落とそう」。かぶせてあった波板をはずし、それをトイ代わりに、燃えている薪を横に取り出していきます。
煙を確認する弟子 薪をかき出します
 それから後、窯口を閉じるまでが忙しいこと。笛木先生は、まず窯口の前のスペースに、水を撒きます。そこに、ドロドロにした粘土を盛り上げ、半分に割れたブロック、通常のブロックを積み上げます。窯口からは、炎がもれ出すくらいの熱気です。粘土を練る人、ブロックを積む人、隙間を埋める人が交錯しながら、窯の蓋を築き上げました。時刻は14時。一番下、半分に割れたブロックの間が、空気取り入れ口です。
フタの準備 フタの準備 フタの準備
フタ完成 空気の取り入れ口からみた窯の中

上段:ブロックと粘土でフタを作り上げます
下段:空気の取り入れ口だけ残してフタが完成

 窯口が蓋をされ、小さな空気取り入れ口からだけの空気でも、出てくる煙はモウモウとすごい勢いです。これは、つまり窯には未だ、無数の隙間があるということなのか。煙は真っ白で、手をかざすと湿っぽく、水蒸気であることが分かります。この煙を冷やすと木酢液が取れるのだよ、と言う笛木先生の話を聞きます。そして、1時間もすると、蒸し焼きにするために、空気取り入れ口をさらに狭め、煙突も穴を小さくします。外は雪が降り始めました。

↑左:(12月3日 14時10分)、 中:(12月3日 15時20分)、 右:雪が降り始めました

(2日目)一晩中、炭材は蒸し焼きにされ続けることで、水やもろもろの不純物が、蒸気となって取り除かれ、純粋な炭素だけが凝縮していきます。つまり、「炭」が完成に近づくと、その煙に含まれるものは無くなり、透明になります。朝の10時30分の煙、大分白みが無くなりましたが、まだ湿っぽさはありました。

↑左:(12月4日 10時30分)、 右(12月4日 11時30分)

窯やその蓋は、乾燥するとヒビ割れてきます。トロトロに溶いた粘土を、蓋の割れ目に流し込み、隙間を無くします。大きな窯の天井は、最高の温度のときに、熱で5cmくらい盛り上がるとか。窯の天井のヒビにはセメンを混ぜた粘土を流し込みます。昼頃になると、煙はかなり透明になってきました。だけどまだ湿気ています。まだ1日くらいは蒸し焼きを続けます。というところで後は鈴木さんに託すことになりました。(川端)


赤谷の日以降(12/4夕〜5)の炭窯当番

4日夕方から5日までの炭窯当番は、赤谷センター島内さん、神林さん、NACS-J茅野さん、サポーターの鈴木4名が担当しました。4日夕方からは、笛木先生の指示に従い、炭窯から煙の出ている箇所をこまめに修復しました。といっても夜10時頃まで3回程修復し、5日朝を迎えました。 炭窯の修復

(↓左)煙が出ているところがあれば用意してある粘土で埋めます
(↓右)煙で釜の中の様子を判断します。

粘土で埋める作業 煙の様子を手で確認  5日朝は、7時30分に空気の取り入れ口を前日昼と同程度まで広げる作業をしているところに笛木先生が登場。笛木先生は、この時点で煙突からの煙が青白くなるのは午後3時頃になるだろうと予想を立て、「煙突からの煙が青白くなると炭窯内部では炭化が完了し、煙はガスに代わり煙突にマッチを近づけて約7〜8秒後にマッチに火が点くようになったら、空気の取り入れ口を完全に塞ぐべし!!」と言い残してご自宅へ。
 11時頃炭窯当番全員で何となく炭窯の様子を見に行くと煙突からの煙が極端に少なくなっていて、煙も青白くなっていたので、試しにマッチを煙突に近づけるとなんと10秒程でマッチに火が点きました。皆で「わーい、マッチに火が点いた。」といっているところに笛木先生がジャストタイミングで登場。  さっそく空気の取り入れ口を完全に塞ぎました。このあと1時間後に煙突を取り外し、煙突穴を塞げばメイン作業は終了とのお言葉を頂きました。空気の取り入れ口を完全密封し、1時間後に煙突穴を塞ぐ理由は、空気の取り入れ口と煙突穴を同時に塞いでしまうと中に溜まったガスの行き場が無くなり、炭窯が爆発してしまう恐れがあるからだそうです。
炭窯の入口にフタをしました 続いて煙突を外します

↑左:炭窯の入口にフタをします 右:続いて煙突も外して穴を粘土でふさぎます

 正午頃に煙突を取り外し、煙突穴を塞ぎました。煙突穴を塞いだあとのメンテナンス(炭窯のひび割れた所から煙が出ている箇所の修復)は、笛木先生が夕方来てくれるとのお言葉に甘え炭窯当番は、午後2時頃に解散しました。サポーターの私は、笛木先生の最後の仕上げが見たくていきもの村を散策していました。午後4時に笛木先生が奥さんと一緒に登場。私も一緒に炭窯のメンテナンスを行い、ようやく炭窯作りが終了しました。
 炭窯形成のための試し焼きとはいえ、どんな炭が出てくるのか来月の炭だし作業が楽しみです。みなさまお疲れ様でした。(鈴木)
12/5の奥山の様子

↑翌日(12/5)の奥山の様子



テン糞拾い隊

 今月も各ルートを手分けしての調査。初日は赤谷手前ルート・小出俣ルート・ムタコルート・いきもの村ルートを行いました。先月沢山のサンプルが採取できたムタコは15cm〜25cmの積雪で採取不能。赤谷手前・小出俣ルートについてはムタコ程ではないものの、積雪がありサンプルの発見には至りませんでした。
雪の小出俣林道 雪のムタコ沢

↑左:雪の小出俣林道、 右:雪のムタコ沢

 ムタコについては、赤谷の日の数日前に様子を見ておりまして、その時の様子は先月までとは一変、短時間の観察でしたが確認出来たテンフンは2サンプル程度、橋上流部の水道工事の影響かも知れません。また2ヶ月続けて10以上サンプルが集中していた石の周りについても、位置が動かされており、サンプルも見つける事が出来ませんでした。いきもの村ルートはビギナー講習会と併せて行い、アトリエ内で1つ採取する事ができ、今までサンプリングに参加されていない方にもご紹介出来た良い機会となりました。

↓左:いきもの村のアトリエでサンプリング中、 右:赤谷林道のフットプリント

ビギナー研修中のテン糞サンプリング ビギナー研修中のテン糞サンプリング
 2日目は赤谷奥・ムタゴ・合瀬ルートを調査。ムタゴは前日同様の積雪でフットプリントを辿って新しいサンプルに期待したのですが見つからず、合瀬では雪が解けた少し周りより高い石の上で3つサンプルリングすることが出来ました。
 赤谷奥は4サンプル採取することができ、積雪前に島内さんが見つけて置いたものを雪の中から掘り起こしての採取したようです。

 開始以来、はじめて雪の影響を受けた調査になりました。来月は足立先生がお見えになる予定ですので、積雪時の留意点等お話が聞けるでしょう。また開始時は調査方法等について、調査頻度がバラバラになると比較のときに問題が生じるので、全ルート1週間以内、1本のルートは1日で完了、を基本で考えていましたが、サンプル数の少なさから「テンの顔がみえてこない」とのことで、今では見つけたら採取をして赤谷の日同様に記録という方針に変わってきました。今後の調査方法等についても、改めてご指導頂ければと思っております。(青木)


(補足)赤谷林道でのサンプリング

 1日目、2日目と赤谷林道で糞のサンプリングを行いました。1日目、結局、サンプルは見つけることができずに終わったのですが、その途中で、イヌワシが木にとまっているのを見つけました。東野さんも初めて見るイヌワシに”威風堂々と森の王者だね!”と、サンプルを見つけることができなかったのに、満足気に戻った二人なのでした。
林道に目立つブナの実 雪の中のテン糞 雪の中のテン糞をサンプリング

↑左:林道にはびっしりとブナの実が落ちています。豊作であることを実感します。 中と右:雪をかきわけて糞をサンプリング。遺跡発掘のようです。

 2日目は、赤谷センター島内さんが以前に発見して、まだ採集していないサンプルが赤谷林道にあるということで、それを採集に向かいました。遺跡を発掘するように糞を採集した後、赤谷林道の途中で、ツキノワグマを観察することができました。直線距離で1km以上離れた大きなブナ(?)の上で盛んに食事をしていました。私たちに気づく様子はなく、ただひたすら食べ続けていました。冬篭り直前の貴重な姿だと思います。また春に会いたいものです。(出島)
ツキノワグマ ツキノワグマ


赤谷の日ビギナー研修会

サポーター活動の出発点はいきもの村にあります。小出俣山への登山経験、赤谷川での渓流釣り、リアルネイチャー・キャンプ・・・さまざまなきっかけでAKAYAプロジェクトに集うことになったサポーターのみなさんも、「赤谷の森」へ繰り出す前に、このいきもの村で環境管理のトレーニングを積みます。今回は、この半年間で新たにサポーターに加わられた方々を対象に、指導役のNACS-J茅野、出島とともにいきもの村を一周し、いきもの村の来歴、環境管理のコンセプト、ネイチャートレイルの歩き方、センサーカメラの仕組みと設置の仕方等について学びました。
このいきもの村の生い立ちを説明 センサーカメラの設置について
赤谷の森10,000haに比べてたった7haのいきもの村にも、人工林から二次林まで、テンやノウサギ、タヌキやアナグマ、キツネなどの中小型ほ乳類から、ツキノワグマ、カモシカ、サルといった大型ほ乳類まで、またフクロウが鳴き、コウモリが飛び、ノスリが餌を採りにやってくる、生態系の小宇宙があります。大勢でひさしぶりに訪れたキツネ穴には、動物が掘ったらしい新しい痕跡がありました。(運良く?)アトリエでテンのふんもサンプリングすることができました。
アトリエにて発見したテン糞をサンプリング いきもの村西側にあるバリケード
このいきもの村のなかで、野生生物のくらしを詳細に読みとり、確立された方法論をサポーターが「赤谷の森」に広げていく。そして集積した自然の恵みを、たくさんの人たちと分かち合う。そんな拠点作りに、2006年も邁進したいものです。(茅野)



写真/文:青木邦夫、川端自人、小林一民、島内厚実、鈴木誠樹、高野丈、茅野恒秀、出島誠一、萩原正朗

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