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2017.08.08(2017.08.09 更新)

親指サイズで編み物上手! 超キュートなカヤネズミ

解説

専門度:専門度3

カヤネズミ(写真:青木雄司)

テーマ:生息環境保全モニタリング自然環境調査絶滅危惧種

フィールド:草原

皆さんは、カヤネズミを知っていますか? 草地に棲む、親指ほどの大きさの、とても可愛らしい小さなネズミの仲間です。ススキなどの葉を上手に編んで“球状巣”と呼ばれる毬のような巣をこしらえて子育てをする、とてもユニークな生きものでもあります。そんな草地の小さな住民・カヤネズミがいま、絶滅の危機に直面しています。

 

草地の利用の変遷と草地の減少

カヤ原と茅葺屋根(写真:畠佐代子)

ヨシやオギ、ススキなどの大型のイネ科の植物は、まとめて「茅(カヤ)」と呼ばれます。茅がまとまって生える草地(カヤ原)は、かつては私たちの日々の暮らしに欠かせない場所として、大切にされていました。古来より、草地から採集される植物(茅草)は、屋根を葺く材料に利用されてきました。また、炭俵の材料や、牛や馬のエサ(かいば)にしたり、田畑に敷き込んで肥料としたり、焚き付けの材料にもなりました。さらに、神事で用いられる「茅の輪」や、雅楽器の「篳篥(ひちりき)」の「蘆舌(ろぜつ)」と呼ばれるリードの部分にも使われています。このように、草地は人々の生活や伝統・文化と深く関わってきました。

しかし、生活の変化に伴い、人々が生物多様性の恵み(生態系サービス)を受ける場であった草地はその価値を失い、「草ぼうぼうの無用の場所」とみなされて、埋め立てや開発が進みました。その結果、国内の草地はどんどん減っています。国土交通省の『土地白書』(平成27年版)によれば、国内の草地面積は、1900年代初めには国土の約13%(500万ha)でしたが、2013年には国土の約0.9%(34万ha)にまで減少しています。

 

カヤネズミのおかれている危機的な現状

草地が減ってしまった結果、草地をすみかとする生きものたちも、絶滅の危機に直面しています。環境省や都道府県の「レッドデータブック」(絶滅のおそれがある野生生物のリストをまとめた冊子)では、絶滅の危険度が高いランクには、草地を棲みかとする種が多く含まれます。カヤネズミも、その一種です。

1960年代前半頃までは、カヤネズミは川原や田んぼで普通に見られるネズミでした。しかし現在、本種の生息が確認されている1都2府38県のうち、1都2府30県 のレッドデータブックに掲載されるほどに、その数を減らされてしまいました。国内の分布域は広いですが、それぞれの生息地は、草地の面積が小さかったり、建物や道路に囲まれて孤立していることも少なくありません。そのため、いったん生息環境が悪化すると、地域的な絶滅につながりやすい状況です。

 

減少している要因と「これから」

草地を覆うクズ(写真:畠佐代子)

草地面積の減少に加えて、草地の「質」の悪化も、カヤネズミを絶滅に追いやる原因になります。例えば、改修工事によって河川敷が冠水しにくくなると、湿った環境を好むオギやヨシが衰退し、クズやノイバラなどの、乾いた環境を好む植物が増えます。また、法面緑化や、工事の土砂に混じって持ち込まれた外来植物の増加も、生息環境の悪化の大きな要因です。さらに、河川堤防の除草は大型の除草車で一度に大面積の草を刈り取るため、個体が巻き込まれて犠牲になったり、繁殖に大きなダメージを与えることがあります。

 

カヤネズミを取り巻く状況は、このように非常に厳しいものです。しかし、草地の環境を改善することで、個体数の減少に歯止めをかけることは可能です。カヤネズミは、良好な草地環境の指標生物とされています。カヤネズミが生息する草地を守ることは、草地を利用する多くの生きものたちの生息場所を守ることにもなります。カヤネズミをはじめ、多くの生きものが暮らす多様性豊かな草地を、次の世代につなぐために、今ある草地を守り、その環境の保全に努めることが大切です。

 

 

 

 

まずはしらべる!カヤネズミ調査に参加しよう!

カヤネズミが編んで作った球状巣

NACS-Jの実施している全国の里山調査“モニタリングサイト1000里地調査 ”では、9つある調査項目のなかにカヤネズミ調査があります。

手法は簡単! 「カヤネズミの巣を探す」というものです。調査の季節は初夏(6月頃)と秋(11月頃)の年2回実施します。カヤネズミが棲める草地の環境の記録を取ることを目的としており、カヤネズミの棲んでいそうな草地について、その草地を構成している植物の種類や草地の面積などについて、記録用紙に習って記録をしていきます。そして、カヤネズミの巣を実際に探して、その数を記録します*。植物の種類などを調べるところは大変かもしれませんが、カヤネズミの巣を探すのは小学生や幼稚園児と一緒にやっているという調査地もあります。

 

現在、モニタリングサイト1000里地調査では、カヤネズミの調査を実施している調査地が少なく、それぞれの場所の変化は見ることができるものの、全国的な傾向を詳細にみることができない状況にあります。危機的な状況にあるカヤネズミや、草地に棲む生きものたちを保全していくためにも、皆さんの近くに、カヤネズミの棲む草地がありましたら、この機会にぜひ調査に参加してください!

 

 

調査地の募集の詳細についてはこちら

 

カヤネズミについて、もっと詳しく知りたい方はこちら

 

*調査では、カヤネズミの繁殖を妨げないよう十分に注意が必要です。カヤネズミはとても臆病な生きものなので、調査では子育ての邪魔をしないように、巣を見つけても触らないで、優しく見守りましょう。

*写真の無断利用・転写は固くお断りします。

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