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2017.06.23(2017.07.06 更新)

サシバの密猟をとめるツアー 試行 in フィリピン

イベント報告

専門度:専門度1

テーマ:エコツアー絶滅危惧種

フィールド:里やま

会報『自然保護』7・8月号でレポートした、サシバのためのフィリピンツアー。

紙面では紹介しきれなかった現地の様子を、たくさんの写真であらためてご紹介いたします!


サシバの密猟をとめるツアー試行inフィリピン

渡りをするタカ「サシバ」を保全するには、越冬地と繁殖地の両方の国での取り組みが必要です。

皆様からのご支援により、フィリピンでの密猟を止めるための活動と、地元の大学によるモニタリング調査が進められています。

今年3月、現地での調査活動などを後押しし、サシバを対象としたエコツアーを試行するためにフィリピンを訪問しました。フィリピンでの活動の様子と担当・出島の仕事ぶりをご紹介します! (リポーター・NACS-J幸地彩子)

▲渡りをするときに見られる「鷹柱」。

 

どうしてサシバのツアーをフィリピンで?

「サシバ」は夏に日本などで繁殖し、冬にフィリピンなどで越冬します。環境省レッドリストの絶滅危惧Ⅱ類に指定された絶滅危惧種です。

日本では調査研究が進みつつありますが、フィリピンでは、まったく調査がされておらず、さらに、渡りの際に集結する場所で大量に密猟されていることが分かりました。

日本にいるサシバは、密猟されていなかったの?

実は、日本でもサシバは獲られていました。沖縄県の宮古島で、食料にしたり、那覇の市場で販売をしたりしていたそうです。ただ、第2次世界大戦後、アメリカの占領下だった沖縄県が1972年に日本に復帰すると、法律によりサシバは獲ってはいけない野生動物となり、違法となりました。

この密猟を根絶するために、尽力した方がいます。宮古島野鳥の会の久貝勝盛(くがいかつもり)さんは、警察や市を巻き込んでサシバの保全に力を注ぎ、見回りや学校での普及啓発活動などを続け、35年かけて密猟の根絶を成功させました。

久貝さんによると、昔の宮古島っでは子どもの遊びとしてゲタを結んだサシバを飛ばす競争があったなど、生きたサシバとの距離が大変近かったようです。これも渡り鳥として大集結をするからこその、生態系サービスだったと言えます。

久貝さんは、2016年度の「自然保護大賞」でサシバの保全が高い評価を受けて「沼田眞賞」を受賞しています。久貝さんの活動についてぜひ自然保護大賞のウェブサイトをご覧ください。

▲ノースウェスト大学でご自分の活動を紹介する久貝さん

 

この密猟を根絶するため、NACS‐Jは、アジア猛禽類ネットワーク(会長・山﨑亨)、Raptorwatch Network Philippines(以下、RNP)と協力して、フィリピンでのサシバのモニタリングと、サシバを観察することが持続的な資源利用になることを地元の方に理解してもらうためのツアーづくりを進めてきました。

今回の試行ツアーは8日間。

元・密猟者から聞くリアルな密猟の話

ご寄付をくださった方や、日本でサシバの保全に取り組む方など総勢13名が参加しました。元密猟者に、実際に密猟が行われていた場所に案内してもらい、密猟の方法などを聞くことができました。密猟は、サシバが集結するほんの数日間で行われる割の良い「副収入」で、生業ではないとのこと。

ひとつの集落で10ほどの密猟グループが存在し、多いときはひとつのグループで1晩70羽ほどのサシバが捕れ、それにたれを付け焼いて食べていたという話を聞き、びっくりしました。

▲真っ暗な中、手持ちのライトで移動しました

 

▲休んでいるサシバ

 

実際どうやって密猟をしていたの?

3人で役割分担をして、密猟をしていたそうです。渡りのために集まってきたサシバは、高いココナツの木の上で休息をとります。夜、葉の上で寝ているサシバを獲るわけですが、① 真っ暗闇の中でサシバを照らす人、② サシバを撃つ人、③ 落ちたサシバを回収する人、という流れでだいたい3人で行っていたそうです。構成は主に家族で、今回お話を伺った方は親戚のおじさんから誘われて始めたということでした。
高さ十数メートルの場所を照らすので、ライトはかなり強いものが利用されていて、最近はバッテリーに防水仕様を施すなどして雨でも関係なく獲れていたそうです。
また、密猟のグループには「縄張り」があり、よその狩場に入ることはタブーだったとのこと。今回の現場でも、入る前に「もしかしたら密猟のグループがいるかも知れないから、もし出会った場合にはすぐに引き上げます」という案内がありました。

 

ツアー中には、地元市長のリーダーシップにより「SAGIP SAWI(サシバを守ろう!)」キャンペーンが行われており、市庁舎や大学には横断幕が張られ、サシバの保護を呼びかけていました。

私たちも市長や大学生から驚くような大歓迎を受け、交流を深めました。

▲カガヤン州立大学のサシバフェスティバルでは、入り口で首飾りをいただく歓迎をしていただきました!

 

SAGIP SAWIキャンペーンとは?

インドネシアのタガログ語で、SAGIPが守ろう、SAWIがサシバのことです。今回のツアーは、密猟の防止に市をあげて取り組んでいるパンプローナ市とサンチェスミラ市で市長に面会をしたり、ノースウェスト大学とカガヤン州立大学でのシンポジウムにツアー参加者が登壇したりしました。
ノースウェスト大学では、マイケル先生の指導のもとサシバのモニタリング体制がつくられていて、これまで誰も調べていなかったフィリピンでのサシバの渡りについて、貴重なデータの蓄積を開始しています。カガヤン州立大学では、「サシバフェスティバル」として大学生による啓発ポスターやキャッチコピーのコンペティションが行われ、ツアーで訪れた日はその優勝者の表彰があったほか、知事が大学と協定を結ぶ一大イベントもありました。今後の保全に向けた取り組みが期待されます。

▲パンプローナ市長にも、NACS-Jの取り組みを紹介してきました

 

▲サシバの里自然学校での活動を紹介するサシバの里自然学校の校長、遠藤さん

 

▲サシバのモニタリングは、双眼鏡をのぞきっぱなし。椅子と日陰が欠かせません。

 

今春の密猟がゼロに!

▲中央に見えるのがココナツ林。こういう場所をサシバは利用し、移動するそうです。

 

帰国後、すごいニュースがフィリピンから届きました。

なんと、今春のサシバ密猟は「ゼロ」!

RNPによるこれまでの地道な働きかけや、地元の大学によるモニタリング活動が、この大きな成果につながっていると思います。

日本で春の渡りを観察している方から「この春、日本に渡ってくるサシバが多い気がする……!」という話も聞きました。

皆様のご支援のおかげで、サシバの保全を願うすべての人にとって、記念すべき春となりました。

▲サシバに関わる多様な方が集まった、貴重なツアーでした。

 

これからもサシバを守るためには

2017年の春、誰も予想しなかったような素晴らしい成果が得られました。ですが、これに満足せず、サシバがきちんと生活できる環境を、日本とフィリピンの両国でつくっていく必要があります。フィリピンではRNPの皆さんが引き続き素晴らしい活動を続けています。日本でも、サシバの生息環境を守りながらサシバの研究をしている場所があります(サシバの里自然学校)。ぜひ、そういう場所にも目を向けて、できることから一緒にしていただきたいと強く願っています。ぜひ、これからもサシバの保全活動に力をお貸しください。

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