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2017.05.17(2017.05.17 更新)

林業がクマタカの生息を守る?!

解説

専門度:専門度4

テーマ:生息環境創出

フィールド:クマタカ林業人工林猛禽

クマタカを保全するための森林管理を考える~クマタカの営巣林および営巣木調査の結果から~

森の生物多様性を維持しながら日本の木材を持続的に利用することは、私たちの持続的な暮らしのために重要です。

NACS-Jは、日本全国の森林に広く分布し森林生態系ピラミッドの頂点に位置する大型猛禽・クマタカが健全に子育てのできる環境に着目し、森林管理手法の提案や、森林認証などへの反映を目指した活動を行っています。

昨年度、皆様からいただいたご支援を活用した2つの成果について報告いたします。

 

クマタカは人工林のスギにも営巣

1つ目の成果は、クマタカの子育てに欠かせない営巣木を確保するための森林管理手法に関する研究を進めたことです。営巣木を確保する方法として、現在ある大径木を保全する従来の方法に加え、近年スギに営巣する例が増えていることから、スギ人工林で間伐などを行い、太く育ったスギを営巣木として利用できるようにすること(山﨑、2013)が提案されています。

しかし、クマタカが営巣している人工林の特徴やその管理手法は明らかになっていません。そこで、(独)水資源機構の全面的な協力のもと、国内9カ所のダム周辺域のクマタカの営巣林合計101カ所の情報を収集し、営巣林の特徴・環境条件を解析しました。

その結果、報告されたクマタカの営巣木のうち約3割は人工林に存在することから、自然林だけでなく人工林の保全も重要であることが分かりました。

また、営巣木として利用された樹種は17種あり、最も多く記録されたのはスギで、全体の約3割を占めていました。さらに、人工林内の営巣木に着目すると、スギが多いものの、モミ、ミズメなど植栽木以外の樹種にも営巣していることから、間伐の際は、人工林内の植栽木以外の木を伐らずに残すことが保全上重要であることが分かりました。

営巣木の大きさに着目すると、自然林の方が大きな木に営巣する傾向があるのに対し、人工林では胸高直径30~50㎝の比較的細い木にも営巣していました。スギが胸高直径30~50㎝まで成長する年数は、条件が良いところで数十年程度とされているため、今後営巣できる人工林が増えると予想されます。

一方でクマタカは翼を広げると約1.5mもあるため、ヤブのように木の本数が多い森の中では飛ぶことができません。そのため、間伐などの管理を行った本数密度が低い人工林ほどクマタカが営巣できる可能性が高まると考えられます。
この仮説を検証するため、クマタカ生態研究グループの協力のもと、滋賀県と三重県のスギ人工林内のクマタカの営巣林の毎木調査を行いました。その結果、まず標準的なスギ人工林と比較し、さらに同じような太さ(平均胸高直径)の木がある林同士で詳しく見ると、営巣林の方がやや本数密度が少ない傾向があり、仮説を支持する結果となりました(図1)。しかし、調査地点が少ないことや、調査した人工林の管理方法が不明であるなど、今後解決すべき課題も浮かびあがりました。

 

図1:クマタカが営巣するスギ人工林と三重県の標準的なスギ人工林(島田2010)の主林木(主に林冠を構成する被陰されていない木)の平均胸高直径と本数密度。

 

クマタカを守る森林管理手法の冊子が完成!

2つ目の成果は、赤谷プロジェクト(群馬県みなかみ町)での10年以上のモニタリングの結果に基づいて作成した『クマタカを指標とした生物多様性保全に資する森林管理』を冊子に編集したことです(下写真)。

この冊子では、クマタカの生態的特徴を踏まえて行動範囲内のゾーニングを行い、区分された場所ごとに適切な森林管理を行う方法を提案しています。今後はこの冊子を活用して、考え方と手法を林業関係者の方々に普及していきたいと考えています。

 

NACS-Jでは、森林生態系保全と持続的な木材生産の両立を目指した活動を続けていきますので、今後ともご支援よろしくお願いします。

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