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日本の絶滅危惧種を守る

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2017.03.29(2017.04.07 更新)

絶滅危惧種ミズアオイと共生する田んぼづくりに取り組んでいます。

解説

専門度:専門度4

イネと共存するミズアオイ

テーマ:生息環境創出ユネスコエコパーク

フィールド:里やま田んぼ

ー森里川海のつながりを大切にした東北支援ー

<ミズアオイと共生する田んぼが生まれるまでのストーリー>


● 津波後に復活した湿地生態系と緊急移植

ミズアオイと共生する田んぼづくりが行われている南三陸町は、集水域がまるごと町の範囲になっており、周辺に降った雨は谷戸地形により河川に集まり海に流れるとともに一部で湧水となってわきだしています。
東日本大震災以前は豊かな水を利用して水田耕作が行われていましたが、農薬や耕作放棄により、湿地の動植物は減少していました。ところが、今回の津波により土壌が攪乱されたことで、埋土種子から絶滅危惧種となった湿地の植物が復元したのです。しかし、復興事業である防潮堤建設、復興道路建設、農地復旧事業により再び消失する可能性がありました。

 

そのため、2014年4月には地域の方々の協力をいただき、道路計画地からの緊急移植のために、日本自然保護協会、南三陸町、ネーチャーセンター友の会、国立科学博物館、筑波大学のメンバーが波伝谷地区から絶滅危惧種の種子が含まれる泥を採取し、開発の影響を受けない寺浜地区の休耕田へ移植しました。移植に際して2m×2mのプロットを設定し、モニタリング調査ができるようにしました。

 

● モニタリングで分かった絶滅危惧種ミズアオイ等の復活

2014年8月、日本自然保護協会と東京農業大学の学生、宮城大学の神宮字准教授らのグループが移植後のプロットの植生調査を行った結果、無事に絶滅危惧種のミズアオイ(絶滅危惧Ⅱ類)の復元を確認しました。ただし、移植元に見られたミズオオバコ等の絶滅危惧種は見られなかったことから引き続きモニタリングを継続する必要があります。
2015年8月28日~9月1日には、南三陸において移植した湿地植物群落のモニタリング調査を実施しました。場所は南三陸町戸倉地区寺浜です。2014年4月に移植作業を行ったので、1年半が経過しています。寺浜のミズアオイ(準絶滅危惧種)は今年もきれいな花を咲かせていました。昨年より開花個体が増えていました。ただ、周辺のヨシやコガマが繁茂し、周辺から見ると目立たないかと思います。ヨシに関しては草刈りなど管理が必要ですが、労力がかかることから今後の課題となっています。

泥を移植したプロットで8月23日に確認されたミズアオイ(寺浜)

 

● 絶滅危惧種と共生した米づくりによる地域づくり

今回移植を行いモニタリングを実施している絶滅危惧種は、攪乱(例えば農作業)という作用がなければ消失してしまいます。そこで南三陸復興推進ネットワークが2014年度からスタートさせた「おらほの酒づくり」プロジェクトと連携して、絶滅危惧種を守りながらお米づくりをすることになりました。

 

この取り組みは、復旧した農地を活用して、酒米をつくりお酒を生産して放棄耕作地、雇用創出、田園風景の復活、それと絶滅危惧種の保全という大きな目標のために行っています。

 

減農薬で米づくりを行っていることからいもち病が発生したり、今年はスズメが多く実が熟す前に中の液を吸ってしまうため、全部の実の一部が茶色く変色してしまっていました。去年は7反歩でしたが、今年は波伝谷と寺浜で20反歩と面積を拡大して作付けしています。被害を受けることを前提に面積を拡大しているとのことですが、せっかく植え付けたコメの収量が減ってしまうことにもなり非常にたいへんな作業だと思います。一方、できたお米は付加価値が高まり、お米や日本酒として販売され、地域づくりにつながることが期待されています。

 

今年5月には、ミズアオイの生育する田んぼでつくられた日本酒の販売も予定しています。

★森里川海のつながりを大切にした取り組みにご支援をお願いします!★

この貴重な湿地生態系を維持していくことは、固有の自然や田園風景を残すとともに地域づくりにも役立っています。日本自然保護協会は、森里川海のつながりを大切にした地域づくりのお手伝いを今後も継続していきます。皆様のご支援をお願いします。

● 田んぼ作業への支援: >>>こちら(←南三陸町復興支援ネットワークのウェブサイト)
※ モニタリング調査のこれまでの活動詳細は下記をご覧ください。
● 緊急避難させた湿地の植物のゆくえ (モニタリング調査のレポートブログ)
※ 日本自然保護協会が行ってきた「東日本海岸調査」の報告書も公開しています。

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