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自然で地域を元気にする

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2017.03.07(2017.04.13 更新)

「自然資源を活かした地域づくり」を進める学習会を全国5カ所で開催しました。

イベント報告

専門度:専門度3

テーマ:人材育成

フィールド:岩手県盛岡市

全国の里山地域では、管理放棄が進んで生物多様性の悪化が問題になる一方で、近年の急速な人口減少に伴って地域コミュニティーの衰退など様々な社会課題に直面しています。このままでは自然保護の担い手もいなくなり、もはや地域の社会課題を解決しなければ自然保護もできない状況にきています。
このような社会課題の解決策の一つとして日本自然保護協会で注目しているのが、森林や草地などの自然資源を現代にあわせた新たな形で利用・循環させることによって「自然の恵み(生態系サービス)」を回復し、地域の社会課題の解決につなげるアプローチです。日本自然保護協会では環境省とともに、里山で活動する市民を対象に、木質バイオマスのエネルギー利用等、自然資源を現代にあわせた形で活用することで地域づくりを進めるための学習会を全国5箇所(福井、広島、大阪、愛知、岩手)で開催しました。その中で、3月5日(日)に岩手県盛岡市で開催した学習会についてご報告します。

●岩手県学習会「里山の新たな資源利用から社会課題に挑む」
岩手県盛岡市で開催した学習会では地元の行政や大学、NPOなど11団体に後援をいただいたおかげもあり、主に岩手県内から定員を上回る85人が参加しました。

学習会では、まずはじめに里山の現代にあった資源利用を促進させ「自然の恵み(生態系サービス)」を回復することによって地域の社会課題解決につなげるアプローチの重要性を伝えました。その後、実際に現代に合わせた自然資源の利用を進めているNPO法人遠野エコネット、NPO法人里山倶楽部の取組みについて報告いただきました。

NPO法人遠野エコネット 千葉和氏

1つ目の事例として岩手県遠野市で活動する遠野エコネット代表の千葉和(なごみ)氏より「薪の駅プロジェクト」についてお話いただきました。「薪の駅プロジェクト」は2010年に開催された活動で、搬出に労力がかかるため林内に放置されたままになっているスギの間伐材を運び出し、薪として販売する活動として開始されました。

しかし遠野エコネットの方々は、活動開始からまもなく作業とコストが合わないことを痛感したそうです。そこで遠野エコネットでは機械などを導入して効率を上げる一方で、採算重視ではなく「もったいない」現状を知ってもらうために薪割り体験や、地域で行われていた馬による木の搬出を体験するイベントなど普及活動をはじめたそうです。

また薪愛好者を増やすため、遠野エコネットでは「楽しむ」ことを大切に山仕事の技術を身につける「山仕事はじめの一歩講座」や間伐材を製材して家具などをつくる「森業(もりわざ)倶楽部」など学びの場をつくり、現在仲間が広がっているそうです。千葉氏は最後に「身近な再生可能エネルギーである未利用の間伐材を活用して、森と共に生きる知恵と勇気を持とう」と語りました。

 

NPO法人里山倶楽部 寺川裕子氏

次に大阪府河南町で活動するNPO法人里山倶楽部の寺川裕子氏からは、多くの人が自分に合った「里山ライフスタイル」を実現するための学びの場を作る活動について報告いただきました。その取組みの1つである「森の若者応援講座」では、受講生は自然の中で活動するノウハウを学べると共に、実際に森や里山の仕事をアルバイトで経験することで、自身の仕事やライフスタイルの実現をサポートしてもらうことができます。

その講座の卒業生の中には「ツリーイング(木にロープを使って登るアクティビティ)」「アルコールストーブワークショップ」など新しい事業をはじめる方や、副業型自伐林業を実践する方も生まれているそうです。寺川氏は、「自分達が長年の活動で拠点やノウハウ、機材など蓄積してきている。そういうものを、若い人たちに引継いでいきたい」と語りました。

 

次に日本自然保護協会の福田真由子から「自然資源を活かすための“自然をみつめる力”とは」と題して話しをしました。福田は現代にあった形で自然資源を活用するために、次のような活動が重要であると話しました。1つは、いろいろな自然の見方や価値を様々な人と共有する「自然観察会」、2つ目は地域の人と自然の関わりや資源量などを把握する「調べる」こと、3つ目は地域にあわせた自然資源の利用するために継続的に見る「モニタリング」です。福田は、実例として全国の市民ボランティアが主役となって取り組んでいる調査「モニタリングサイト1000里地調査」を行う石川県輪島市の例や、人と自然との関係を様々な人と一緒に調べる「人と自然のふれあい調査」を行う宮崎県綾町の事例を紹介しました。
この学習会に参加された博物館の方からも、「自然をみつめる目」が震災後の地域づくりに活かされた例として、震災の津波の後に新しくできた干潟に水産資源がもどってきたことを地元の漁協の方がみつけ、漁協の方の要望を受けて防潮堤建設の場所が変更したことを紹介していただきました。このような実例を通じて、自然を活かした地域づくりの基礎になる「自然を見つめる目」の大切さを会場の皆さんと共有することができました。

 

岩手大学 伊藤幸男氏

休憩時間に千葉氏によるギターライブの演奏で盛り上がったあと、最後の1時間で座談会を行いました。はじめに岩手大学農学部の伊藤幸男氏から、今後岩手や東北では全国平均よりもさらに人口減少が進み、特にここ20年は森林の所有とその資源の橋渡しとなる大相続時代となることが予想されていること、その一方で現在、森林との新たな接点を模索する「木の駅プロジェクト」など地域レベルの取り組みが各地でおきていることが報告されました。最後に伊藤先生は「今次の時代に何を引き継ぐのかという視点が大切になる」と会場の皆さんに語りました。

 

 

 

グループワークの前に、主に森林管理の活動をされている方は手を「パー」、主に調査・観察されている方は手を「チョキ」、それ以外「パー」で示し、自分の立ち位置を表明

そのあと参加者同士がグループになって、「里山の新たな利用から社会課題に挑むうえでは、何が大切か」をテーマに話し合いました。グループワークの時間は30分程度でしたが、各班で熱心な話し合いが行われ、各グループのまとめでは「森林資源の若者へのバトンタッチ」「宝の山をどう伝えるか」「所有者との合意形成」「理解×共有×場づくり」「里山との関係を持って暮らす」「野生生物とうまく付き合う」などが出されました。グループワークを行ったことで参加者が主体的に森林の利用を考えるとともに、森林に関わる様々な分野の方々の交流を深めることができました。
最後に、講師から「違う地域の方と話すことで自分の活動場所の新しい価値が発見できる」「今まで調査・観察会に関わる方と森の管理に関わる方が一緒に話す学習会の場はなかった。このような場が大事」とのコメントをいただいたあと、日本自然保護協会から改めて「自然資源を活かすためには地域の自然を見つめる目と様々な人たちが話し合ことが大事である」ことを伝え、閉会になりました。

グループワークの様子

参加者アンケートでは「異なる立場の人と話し合う機会があって良かった」「『地域づくり』という言葉は広いので、視点を絞ったほうがよかった』「継続する場をつくってほしい。次の展開こそ重要」などコメントをいただきました。
各地で人口減少が進む中、ますます「自然資源を活かした地域づくり」への期待が高まっています。日本自然保護協会では自然の恵みを受け続けられる世の中にするために、地域の自然をみつめる目の大切さを広めるとともに、様々な人が集まり地域にあった自然資源の活用を考える場づくりを進め、各地域の皆さんとともに将来像を描くことができればと思っています。「自然資源を活かした地域づくり」で先進事例をお持ちの方、ぜひ日本自然保護協会までお知らせください。

 

千葉氏による休憩中のギター演奏

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